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novel
某少年兵の嘆き(アヤテイ←ミカゲ)


ミカゲ・スプライトは、現在己の行動を激しく後悔していた。


ここは、バルスブルグ帝国第七区にある陸軍官舎の一室。
――ミカゲに割り当てられた私室である。
部屋の中央にある ローテーブルには、プルタブの開けられた発泡酒の缶が二つと上体をうつ伏せにしたまま、何やらぶつぶつと吐くテイト。
そして、それらを溜め息まじりに見下ろすミカゲの姿があった。

「はぁ…」
ミカゲは、もう何度吐いたか知れない溜め息を零した。
その顔には、後悔の色が濃く刻まれている。

こんな事態に陥ったそもそもの原因は、ミカゲの僅かな出来心に依るものだった。
―――そう、酒類に強く無いテイトに酒を勧め、酔わせて、ほんの少し
酒に酔った可愛いテイトの顔を拝みたかっただけ…なのだ。(断じてそれ以上の下心は無い!…多分。)
……確かにミカゲの思惑どおり、テイトは酒に酔い、先程から愛らしい様を見せている。
―――だが。

「おい!ミカゲ!聞いてるのか!?」
ミカゲの溜め息を聞き咎めたテイトが、上体を起こして、ミカゲの肩を揺する。
「!!…あっあぁ。聞いてる聞いてる!///(テイト!顔!顔近いって//)」
拳一つ分程の所に有るテイトの顔は、酔っている為に
翡翠の瞳は水気を帯びて潤み、滑らかな頬からほっそりとした首筋にかけて、ほんのりと薔薇色に染まっている。

そんなテイトを直視していられる訳も無く、視線を逸らして返事を返すと、若干不満そうではあるものの
「なら…いいけど…。」
と納得していた。


「あっ!そうそう、それでさ、ミカゲ!」
テイトの弾んだ声音に視線を戻したミカゲは、次の言葉にうなだれた。
「アヤナミ様ったらさ〜、もう、オレがちょっと油断して書類で指切った時とか、『大丈夫か、テイト。』って心配して下さってさ〜…」

(…………やっぱり!また…また、アヤナミ様…。)

ミカゲの唯一にして最大の誤算は此処に在った。
――――酔ったテイトは、アヤナミとの 所謂『のろけ話』
しか口にしないのである。
口を開けば、アヤナミ様。アヤナミ様。アヤナミ様。

…しかも、話の間、ミカゲの事は完全に意識の外にすっ飛ばしているのだ。


(………虚しい…。)
打ちひしがれながらもテイトに意識を向けると、相変わらず満面の笑顔を湛えて、アヤナミの事を褒めちぎっている。

………そんなに嬉しげに話されては、話を止めろと制止するのも偲びなく、
ミカゲは泣く泣くテイトののろけに耳を傾け続けるのだった。

―――一時間後、部屋に居ないテイトを心配したアヤナミが、テイトを迎えに来るその時まで。


end



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