novel 愛玩日和 閉ざされたカーテンの隙間から射し込む光に促され、私はゆっくりと瞼を開いた。 目の前では、テイトがすぅすぅ寝息をたてて、安心仕切った顔で寝入っている。 その様子を微笑ましく思いながら、私は誘われる様に手を差し伸ばし、テイトの柔らかな頬を包み込む様に触れた。 「ぅ…ん」 …起こしてしまったかとも思ったが、僅かに身動いだだけでテイトが目を醒ます気配は無い。 其を良いことに、私は更に手を進め、親指でふっくりとした薄桃の唇をなぞりながら、顎を軽く持ち上げ、薄く開いた無防備なそれに口づけた。 最初は軽く、唯触れるだけに止め、テイトの柔らかな唇の感触を楽しむ。 だが、其だけでは満足できず、舌を差し入れ歯列を割って温かなテイトの口内を楽しむ。 ―――舌先で上顎を擽り、頬裏を舐め上げ、奥に潜んで震えている舌を捉えて絡め、吸い上げる。 「ん…ふぁ…」 其処までして、漸くテイトは目を醒ましたらしい。 私は一旦口づけを解き、紅く染まったテイトの耳許で囁いた。 「テイト…。」 「ぁ…ん…ぁや……な…んん、」 そして、テイトの言葉を聴かず 再び口づける。 初めは起き抜けの為、驚き、躰を強張らせていたテイトも 私に応え、おずおずと舌先を絡めてきた。 翡翠の瞳は熱に冒され潤み、目許と頬には鮮やかな朱が差している。 ―――潤んだ翡翠から、涙が一つ、零れ落ちた所で 私はテイトを解放した。 「は…っぁ、アヤナミ…さまっ」 「ああ、…やっと目覚めたか。おはよう、テイト。」 声を掛けつつ、テイトの躰を抱き起こし、息が整うまで 背中をゆっくり擦ってやる。 暫くして、息を整えたテイトが咎める様に此方を睨み付けてくる。 ――だが、瞳を潤ませ、頬を上気させた愛らしい顔で睨まれても 恐ろしくも何とも無く、寧ろ男を煽るだけだということに 本人は気付いていないらしい。 ――― 全く、困ったものだ。 「〜〜っアヤナミ様!なっ…何をなさるんですか!?」 問いかけてくるテイトの顎をあやす様に擽りつつ 「お前の愛らしい寝顔に誘われたのだ。」 と答えを返せば ボッと音がしそうな程の勢いで、華奢な頸筋迄もが朱く染まった。 その様があまりに可愛らしく、喉の奥で低く笑うと たちまち眉根を寄せ、顔を背けて拗ねてしまった。 …頬がぷっくりと膨れている様に、何とも微笑ましい気分になり、自分で、弛みきった表情をしているのがわかる。 「…アヤナミ様!」私のその様を目にしたテイトが更にむくれるのを防ぐ為、顎を擽っていた手を頭において、宥める様に擦ってやると、 たちまち翡翠の瞳は和らぎ、擽ったそうな表情を見せた。 「もう、何なんですか…///」 「ん…?さっきも言っただろう、…お前の無垢な色香に誘われたのだ。…と。」 「っ…///」 「どうした?テイト。」 クスクスと 笑いながら、朱い耳許で囁いてやると、細腕が伸ばされ首筋に華奢な肢体がかじりついてきた。 それを受け止め。 サイドテーブルに有る 置き時計に視線をやれば、時刻は正午少し前。 今日は非番。 時間を気にする必要は無い。 腕の中のテイトに視線を移してみれば、甘く熱を帯びた翡翠とかち合った。 私は唇に笑みを刻み、再び私を誘う薄紅のそれに唇を重ね、 今日は一日、この愛しい恋人と戯れる事にした。 end [*前へ][次へ#] [戻る] |