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novel
愚考(アヤテイR−15)


――馬鹿馬鹿しい。
軍施設の固い寝台の上、白い喉を仰け反らせ震える、幼さの残る肢体を組み敷きながら
アヤナミは昼間の忌々しい出来事を思い返していた。


――――――

軍部の広い会議室に設置された戦況を伝えるモニタに映し出された光景は、アヤナミに自身が久しく忘れていた、
¨恐怖¨ という感情をまざまざと思い起こさせた。


――敵の放ったザイフォンに弾き飛ばされ宙を舞う躯。

――そして、噴き出す鮮血。
色を無くし、蝋の様に白くなった…テイトの横顔。

……その様に、らしくなく取り乱しかけた、自分。

結局、その後は同じ戦線で戦っていたヒュウガのフォローもあって事なきを得たのだが、戦闘の終幕を見届け、席を発とうとしたアヤナミの背に、元帥席から放たれた嘲笑を含んだ声が追い掛けて来た。

「冷酷非情なアヤナミ参謀長官殿が――あの様な些事に心動かされてしまうとは…。」

――なんと情けない。

口に出さずとも、元帥席に座している男が何を思っているのか等、アヤナミは理解していた。
そしてまた、自身も同一の思いを、その胸中に抱いていた。
掛けられた声に答えぬまま、会議室の扉を潜るアヤナミの背に、もう一度、
「……その情は、君を弱くするだろうね。」
――再度放たれた声は、閉ざされた硬質な扉によって、沈黙に満ちた会議室に反響して、消えた。


――――

――馬鹿馬鹿、しい。
胸に溢れてくる忌まわしい回想と、思考を振り切る様にアヤナミは舌を打ち、己の下で、胸を上下させ、淫らに喘ぐ紅く色付いた口唇を強引に塞いだ。
無理矢理舌を割り入れ口腔を蹂躙していく。
奥の方で縮こまっていた小さな舌を捉えて絡ませ吸い上げると、己の背中に白い包帯を巻いた細い腕がたどたどしく回された。

深い口接けを解いて相手の顔を覗き見れば、翡翠の瞳を熱に潤ませたテイトが、真っ直ぐ此方を見つめていた。

「……アヤナミ、様。」

しかし、
己の名を呼ぶテイトに、アヤナミは言葉を返す事が出来なかった。
テイトの未成熟な肢体には、到る所に包帯が巻かれ、その下からは…アヤナミが行為を強要した為だろう、開いた傷口から血が滲んでいた。
「アヤナミ様…。」
もう一度、ほんのりと薄紅く色付いた小さな唇から鈴を転がした様な愛らしい声が、求める様に己の名を、呼んだ。


頭で判断するより先に、何かに突き動かされる様にして、アヤナミは華奢な躯を抱き締め、可憐な口唇を貪った。

――抱き合い高められた二人の熱が部屋を満たす頃には、昼間の出来事等アヤナミは忘却の彼方に追いやっていた。


end

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あきゅろす。
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