novel 秋風と共に(アヤテイ+ヒュウ) 猛暑と謂われた夏場を過ぎて、涼やかな秋風が吹き抜ける様になった今日この頃―― テイトは参謀部の休憩室で必死に襲い来る眠気と戦っていた。 茹だるような夏の暑さが僅かばかり解消されたおかげで、 だいぶ過ごし易い気候になった。 大きく取られた窓から差し込む柔らかな陽光と、其処から吹き込んで来る温度の低い秋風がとても心地良くて、ついつい目蓋を閉じてしまいたくなる。 「うぅ〜…、アヤナミ様が帰って来るまで、……起きてないと……。」 目元を手の甲で擦り、頭を振って、少しでも眠気を払おうとしてみるもまるで効果が無い。 「ふぁ……。ぅ…ほんと、ねむ……。」 別段疲れているわけでも、寝不足なわけでもないのだが、 どうにも睡魔は去ってくれない。 そうしている内に、段々と意識に靄が掛かって、視界が狭ばまり、閉ざされていく。 (あ…、目蓋…と…じ……起きて…ないと……) まどろみに支配されて、意識を投げ出すその瞬間、ふと目に付いた漆黒の軍服を掴んで、引き寄せた。 (アヤナミ様……。) ――――――― 1時間後――。 会議から戻ったヒュウガとアヤナミが目にしたのは、ヒュウガの軍服を抱き締めてすやすやとソファーの上で眠るテイトの姿だった。 「あっれ〜テイト君ってば、俺の軍服抱き締めて眠っちゃって〜!か〜わいいな〜もう!」 「…………唯単に寒かっただけだろう。」 嬉しそうに笑うヒュウガに、些かむっとした雰囲気を漂わせつつアヤナミが返す。 「いやいや〜、アヤたん!負け惜しみは止そうよ。」 「…………黙れ。」 静かに怒りの臨界点を突破したアヤナミが、何時もの如く鞭をヒュウガの脳天に炸裂させようとした――その時。 「ん、〜〜ん〜…むにゃ……。」 むずがる様なテイトの声に、鞭を振りかぶっていたアヤナミの腕がぴたりと止まった。 己の頭上で停止した鞭を見上げつつ、ヒュウガが忍び笑いを漏らす。 「ほ〜らアヤたん。あんまり騒ぐとテイト君、起きちゃうよ?」 「…………仕方が無い。」 ヒュウガの揶揄に、不愉快そうに呟きながらも、眠るテイトを見つめる紫色の瞳は柔らかな光を帯びている。 「…ヒュウガ、行くぞ。」 暫くして、テイトを起こさぬ様に、音を立てず静かに踵を返すアヤナミに、苦笑しつつヒュウガもその後に続き、執務室への扉をくぐった。 end [*前へ][次へ#] [戻る] |