novel
恋恋遊戯(2萬打企画小説アヤテイ+ハク)
豪奢な構えの門の前に立ち、テイトはその幼さの残る顔に、愛らしくも艶やかな微笑を浮かべて、迎えの車に乗り込む男に声を掛けた。
「――ハクレン様、次にお越しになるのを、…楽しみにしています。」
「テイト……。ああ、暇を見つけて、また来る。……無理をするなよ…?」
車内から心配気な声が返って来て、
テイトは一瞬瞠目し、次いでクスクスと笑いだした。
「……テイト!」
明らかにムッとした様子のハクレンに、安心させる様に言葉を重ねる。
「…大丈夫だよ、ハクレン。……心配してくれて、ありがと。……嬉しい。」
そう言って手を振ると、納得のいかない顔をしつつも、ハクレンは運転席に向かって何事か指示をだし、車を発進させた。
去って行く車影を見送ると、テイトは踵を返し、着物の裾を汚さぬ様に注意しながら門の中へと消えていった。
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長い廊下を抜け、優美な庭園を横切り、手元の灯りを頼りに暗闇の中、離れへと続く小道を辿る。
暫くすると、たっぷりとした紫陽花の群の向こうに、華奢な花窓から零れた灯りが見えてきた。
ーー(……アヤナミ様…)
その灯りに誘われるように、テイトは小走りで駆け寄り、離れに上がった。
部屋の前に立つと、中から入室を促す声が耳朶を打ち、テイトは慣れた動作で戸を開けた。
「ー…アヤナミ様。」
「テイト、此方へ来い。」
「はい…。」
座敷へ上がり、珍しく手酌で呑んでいる男ーーこの、遊廓・絢涛【あやなみ】の主人であり、
また、テイトの恋人でもあるアヤナミの元へと腰を下ろして、テイトはアヤナミの手から徳利を取り、鶯谷色の酒盃に酒を注いだ。
「どうぞ。」
「ああ、済まんな。」
満たされた盃の酒をアヤナミがゆっくりと飲み干してゆく。
もう一度酌をしようとテイトが徳利を差出そうとすると、
腰に腕を回され強い力で引寄せられた。
「あっ……!」
危うく取り落としそうになった徳利を慌てて漆の盆に置く。
「アヤナミ様…?」
何か粗相をしでかしてしまったのかと
不安に瞳を揺らしてアヤナミを見上げると、静かな躑躅【つつじ】色の瞳と出合った。
次いで、酒盃を置いた手が着物の袷を解き、テイトの白い胸元を露出させた。
「……何もされていない様だな…。」
検分する様に視線を這わせるアヤナミに、テイトは淡く笑みを浮かべる。
「……オレには、アヤナミ様だけ…ですから。」
「………そうか、………そうだな。」
そのままアヤナミの膝に乗り上げ、
甘える猫の仔の様に厚い胸板に額を擦り寄せると、触れるだけの口接けが、顔じゅうに降り注いだ。
額、瞼、頬、…そして、最後に唇に。
「んっ……ふ…。」
口腔に滑り込んだ厚い舌に、唾液ごと絡んだ舌をきつく吸い上げられて、脳髄にじん、とした痺れが甘く走る。
(ーー…くらくら……する…。)
重なり合った互いの唇から、じわじわと快楽の波が広がり、どんな蜜よりも甘く濃厚な感覚に躯が支配される頃、長い口接けが漸く解かれた。
口の端から伝う唾液をアヤナミの長い指が拭う。
テイトは肌を滑る
アヤナミの指先に唇を寄せた。
「んっ…ふっ…はぁ……む…。」
指先を緩く噛んで、根元迄ねっとりと舌を這わせて舐め上げる。
唾液でてらてらと光る其を口腔に含むと舌を捏ねる様に撫でられた。
「んぅ……んっ…んっ……っ。」
「…テイト。」
口内を犯す指に夢中になっていると、
熱の篭った紫紺の瞳が自分を見据え、
欲に濡れた熱い吐息が流し込まれる。
「こんなに誘って、いけない子だ…。
……私が、欲しいか…?」
問い掛けに、何処か淫靡な笑みを浮かべ、答える代わりにテイトは今一度、紅く濡れた唇を
アヤナミの元に寄せた。
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ーーー重なり合った二つの影は、夜が明ける迄、離れることは無かった。
end
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