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novel
馬鹿馬鹿しい雑事(アヤテイ、ヒュウコナ前提アヤ+ヒュウ)

「却下だ。」

初夏の日差しが差し込む参謀部執務室に言葉と共に、絶対零度の吹雪が吹き荒れた。

ーーーーーーーーー
何処かで暴動が起こっただとか、軍の高官が賄賂を受け取ったとかいう問題事項の一つも無い、
なんという事も無い、ごく平凡な1日の筈であったーーー

その書類が帝国参謀長官、アヤナミの元に廻ってくるまでは。


ーーーーー

執務机を挟んで、氷ついてしまった帝国兵の代わりに、
ヒュウガは不思議そうに問い掛けた。

「どうしたの?アヤたん。」

だがアヤナミは質問には答えず、眉間に皺を刻み付けたまま、代わりに無言で一枚の書類を差し出した。

歩み寄ってそれを受け取り、内容を確認しようと目を走らせると、そこには『クールビズ推奨!若年兵は半袖短パンで!!』
と印刷されたスローガンと共に、
詳細と、モデル化された夏仕様の軍服がカラーで載っていた。


(あぁ〜どうりでアヤたんが反対する訳だ………。)
ヒュウガは痛い程納得した。
夏仕様の軍服は、露出が高い上に生地が薄くなっており、身体の稜線が出やすい造りとなっているようだ。

…………こんな服を、恐ろしく嫉妬深いアヤナミが、テイトに着せる訳が無い。
(まぁ、テイト君がこの軍服着たとこ、見てみたい気もするんだけど……言ったらアヤたんに殺されるだろうしな〜〜あっ!…コナツにも着て欲しいな〜〜、可愛いだろうな…コナツ。)

等と、つらつらと考えに耽っていると
ダァン、という破壊音と共に「ひぃぃっ!」という情けない叫び声が聞こえ、
ヒュウガは音源へと視線を向けた。

「ーーーとにかく、だ……。」

怒りの余り、愛用の鞭でおもわず机に皹をいれてしまったアヤナミは、絞り出すような声で
震える兵士に向かって言い放った。

「こんな愚案を認可する等到底出来ぬ。………いいかげんにしろこの愚か者共が…!!」

怒声に晒された哀れな兵士は顔面蒼白。今にも倒れてしまいそうである。

だが、そんな哀れな兵士に対して、アヤナミには一片の容赦も無かった。

「いいか……、今、私が言った言葉を、一言一句違えず報告して来い。」

更に威圧するように声を掛けると、
帝国兵は何度も首を縦に振り、冷や汗にまみれた顔で最敬礼をすると、脱兎の如く執務室を後にした。

ーーーーー

二人残された執務室で、ヒュウガは堪えきれないとばかりに笑い出した。

「あははははっ!アヤたん、いくらなんでも苛め過ぎだよ〜!」

あの兵士は、あくまでアヤナミに報告に来ただけであって、別に彼があの書類を作成した訳では無いのだが、
書類を届けに来ただけで同罪とみなされ、アヤナミの不興を買ってしまったのだ。
それは彼にとって、とんでもない不幸となって襲いかかって来るのだろうが、
生憎とヒュウガには関係が無い。

「ヒュウガ。」

一頻り笑った所で、執務机の向こうから、少しはマシになったものの、相変わらず冷え冷えとした声でアヤナミに呼び掛けられ、ヒュウガは居ずまいを僅かに正した。

「なぁに?アヤたん。」

だいたい何を言われるのかは解っていたが、一応訊ねる。

「…愚か者共を探し出して斬りつけて来い。……程々に、な……。」


そう言うと、
用件は済んだとばかりに書類に目を落として執務を再開し出した己の上官に、
内心肩を竦めつつも了承の意を伝え、ヒュウガは執務室を後にした。



end

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あきゅろす。
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