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“あい”
“…んだよガキ。こっちくんな”
 笑顔とともに差し出された食べかけのビスケット、小さな手。
 それを邪険に追い返そうとする自分。
 初めての出会いはこんなだった。
 ブリタニアにもゲットーのような場所がある。
 そこに住み、人嫌いと人間不信まっ盛りで、気に入らないヤツはボロボロになるまで殴る蹴るを繰り返し、近寄るものがいなかった自分に、屈託のない笑顔で近付いてきたのはこの腕のなかで、寝息を立てている少女…マーシャお嬢様だった。
 なぜ、お嬢様がそこにいたかはわかっている。
 慈善事業として、スラムの人間に食事を提供する活動をするお母上‐奥様に連れられてきていたからだ。
 おとなしくさせておくつもりで与えたビスケットをなにを考えていたのか、奥様を善人気取りとにらみつけていた自分のところへ、ちまちまとやってきて先程の会話になった。
 なおもビスケットを進める彼女を蹴り飛ばそうとしたが、そこに奥様がやって来た。
“ごめんなさいね。この子、自分が一口食べて美味しいと思ったものを、すぐにヒトにあげたがるの”
…お嬢様を抱き上げた奥様に、一瞬後光が見えたように見えた。
 大袈裟ではなく。

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