childhood
“我が国は素晴らしい”と…。
私にはそれができなかった。
受け入れることができなかった。
むしろ、自分の母国の、他の国への暴虐さに言いようのない気持ち悪さと寒気を感じ、降り立った駅で私は倒れたらしい………。
気がつくと、租界に用意された屋敷の自分の寝室とされた部屋の天井を見ていた。
ぼやっとした頭で、自分のまわりをみまわす。
そばにいたのは、護衛役としていつもいるアベルだけ。
同じ護衛役のトレスは兎も角、私のそばには、父はおろかメイドすらいなかった。
「アベルぅ、アベルぅ」
心細くて、近くで居眠りしているアベルを呼ぶ。
私達姉弟の味方の名前を。
すると、彼はパッとはね起きて、私の顔をニコニコと覗きこんできた。
「はい、マーシャお嬢様。ご気分は?」
私の額にあてた手は、ヒンヤリしていて気持ちがいい…。
「お水、お飲みになりますか?」
「うん…」
アベルの気遣いに、そう返事をしたものの、水を汲むために離した手がそのままどこかへ行ってしまいそうで、酷く怖く感じた。
だから、アベルの手に思わずしがみつく。
「どうされました?」
「離れないで…。怖いよう」
「はい…」
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