childhood 「エリア11に行くから、そのつもりでいておけ」 それは、いつも通り弟と二人だけの晩餐のとき、普段より早く帰宅した父の一言だった。 有無を言わせない、高圧的な言葉。 それだけで、すべてが決定してしまった。 それから二ヶ月後、私たちは日本、いや「エリア11」と呼ばれている場所に降り立った。 荷物は、使用人達とともに先に新しい屋敷に到着しているので、迎えにきた護衛のアベルとともに、私たちは手ぶらでトウキョウ租界行きの列車に乗り込む。 乗車中、最初は景色にみとれていたが、租界に近付くにつれ、高架下の景色に気付く。 きれいに立っている建物がないことに。 ガレキと区別のつかない小屋や、シートかなにかで破損箇所を覆っている建物の群れ…。 ここがゲットーと呼ばれる場所だと、あとになってアベルが教えてくれた。 それが、ある場所を境に景色がガラッと変わった。 それがトウキョウ租界…。 自分達が住む場所。 あまりにもの世界の落差に、目眩を覚えると同時に気持ち悪さを感じた。 これが、自分の祖国がやっていることなのだと思うと、鳥肌が立つ。 本来なら感動するのべきことなのだろうか? [*前へ][次へ#] [戻る] |