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「お嬢様のことですから」
 伊達に10年もおそばにおりません、と笑った。
「お嬢様のことを旦那様にご報告しないとなりませんから」
確かに。アベルの仕事には、護衛のほかに行動を監視することも兼ねている。
「では、私は父様にオヨガされているの?」
 爵位ばかりか、一族全員が生命を脅かされる行動をしているはずの私が、こうも自由に振る舞っているのだ。
 当然そう考えて、そのままそれを口にした。
「いえ。この件に関することは一切しておりません」
「はぁ!?」
 驚いて思わずジッと残りのクレープを食べ終え、満足げに微笑むアベルを見つめた。
「なんで?」
「お嬢様のなさりたいことを、お嬢様がなさっていらっしゃることがお嬢様にとってのノブレス・オブリジェーションなら」
 私は、お手伝いいたします。
「ほんとにいいの?」
 それを訊くのは当たり前だ。
 主の反逆行為を見過ごした使用人にもそれなりの罰は下る。
 アベルが私とともに滅びの道を歩く理由はない。
「貴女とともに、レディ。私はあなたの味方です」
 アベルはそう言って私にひざまづいた。

「お嬢様、いかがされましたか?」
 その声で振り返る。
 結局、学校はサボりになった。
 制服ではまずいということで、アベルが邸に戻って持ってきた服を駅のトイレで着替え、街中を歩く。
 そんなときだった。
 父が、女性と、歩いているのを見てしまったのだ。
 運がいいのか、むこうは気づかずに通りの向こうへ消えていく。
 昼間から父にしなだれかかる彼女と、昼間から平然と愛人と歩きまわる父に、嫌悪感しか浮かばない。


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あきゅろす。
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