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「いかがされました?」
 無事に連絡員に報告書を渡せて安堵している私に、アベルが尋ねてきた。
 邸からここまで私のようすを窺っていたらしい。
「なにが?」
 足を止めるが、振り向かずに問いを返す。
「お嬢様が眠そうなお顔をなさってるので」
「うーん。夜遅くに本国のエセル兄様から電話があって寝るのが遅くなっただけよ」
「左様ですか。てっきり秘密のバイト関係かと思いましたが…」
 突然そんな言葉を投げ込んだアベルに、内心の驚きを悟られないよう平静を装うが、失敗してしまったようだ。
 身体が震え、血の気がひいていく。
 そんな自分を叱咤し、再び歩き出した私の手を捕まれた。
「…遅刻しちゃう」
「動揺しすぎです。それにそんな状態では、勉強に集中できませんでしょ?」
 動揺させた本人が、私を学校とは反対の方向へグイグイと引っ張りだした。

「はい、どうぞ」
「うん…」
 ベンチで茫然としている私に差し出されたクレープを受け取り、アベルに座るよう隣を叩く。
「おいしいでしょ?ここのクレープ」
 仕事の合間にいろいろチェックしているんですよと笑った。
「…どうしてわかったの?わからないように受け渡しだって気をつけていたのに」

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あきゅろす。
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