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「…それは兄様のせいではございませんでしょうか?」
いやなことを覚えていてくれているものだ、と思う。
あれは、自分の里心とエセル兄様の一言がキッカケでした行動で、振り返ってみると赤面ものの思い出だ。
『あはは。ごめん、ごめん。申し訳ないね。…で、話をもとに戻すけどさっき言ったとおり、キチンとした訓練を受けることができるようにするから』
「でも…」
『レイフを言い訳にしてはいけないよ。僕が手配しておくから、必ず訓練は受けなさい』
たしなみとして必要なんだし、とまで言われるとグゥの音も出ない。
渋々了解すると、夏期休暇に本国に帰国してほしいという希望と、夜分遅く電話した詫びと挨拶の言葉を私に伝えると、エセル兄様は通話を切った。
ため息をつきながら、ケータイを耳から外すと大きくのびをし、そのままの姿勢で天井を見つめる。
レイをダシにしている…。
そんなふうに見えるのだろうか?
ただ単に私は守りたいだけだ。
私が嫁ぐか、レイが私を必要としなくなるまで姉として、死んだ母のかわりに。
(ねむい…)
あれから一睡もできなかったが、時間通り邸を出る。
連絡員に接触し、報告書を渡すためだ。
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