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今日は僕が黒。
「随分張り切っているな、坊や」
いつものテーブルで、アベルに手伝ってもらいながらチェスセットの駒を並べる僕に長老が話しかけてくる。
「うん、今日はお兄ちゃんと約束なんだ」
「そうか」
僕の答えに、長老の皺だらけの顔がさらにシワシワになる。
長老は、このチェス愛好会の会長的存在で、僕のチェスの師匠のひとり。
もうひとりは、これからくる相手‐お兄ちゃん‐だ。
二人とも、僕に教えてくれるだけじゃない。
手加減なしの勝負をしてくれる。
姉様やトレス達以外で、僕が好きな人といったらこの人達だ。
子供だからとか、身体が不自由だからとか関係なく僕に接してくれる。
だから好きだし、尊敬しているんだ。
「お兄ちゃん、遅いな…」
駒を並べ終えて、しばらく経つけど、お兄ちゃんはまだこない。
ふと、姉様の方を見ると、クレープ片手にケータイでお話をしていた。
お友達かな…?
ジッと見ている僕に気が付いて、姉様が手を振ってくれた。
僕も手を振りかえす。
なんか、騒がしい。
「う、わ÷¥$∀※★◇◎◆〜〜」
アベルの奇妙な悲鳴が、カラスの鳴き声と共に聞こえた。
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