Secret Work
ニコッと笑うアベルに、たったいま気になったことを尋ねる。
「ここに来たとき、家の恥にならないような格好だったわよね。どうしたら、そうなるの?」
「若様のお側で立っておりましたら、カラスに襲われまして…」
「つっつかれたのね…」
絶句した。
そして目眩がしたような気がして、額に手をあてる。
「何本か巣の材料になったようです…。あ!」
そしてなにか思い出したかのように、ほつれた感じのする細い布をポケットから取り出した。
「でもこのリボンは死守しましたぁ」
嬉しそうに笑う。
なんで、そんなリボンひとつで喜んでいるんだろうと思いながら、しゃがむように手で合図した。
「こっちに背中をむけなさい」
バッグの中からポーチを取りだし、消毒液と櫛を出す。
「血が出てる」
消毒液をティッシュに染み込ませ、傷を拭うと乱れた髪を櫛で整えてやる。
「あ、ありがとうございます。お嬢様」
「お礼を言われる筋合いはないわ。恥をかきたくないだけだし」
護衛にしてはムダに長い髪を、先程のリボンで結んでやる。
「できた。今度から帽子を被りなさい。カラスは光り物が好きなんだから」
「はい、承知しました」
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