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Secret Work
 表情も“友人との会話”にふさわしいものにしている。
 その自分の演技力に酔いしれ、演劇部に入ればよかったかと思いそうになるが、油断はできない。
 通行人の耳に入らぬよう、細心の注意が必要だった。
「…わかりました。また、いい情報が手に入りましたら連絡させていただきます」
「期待している。こちらの依頼もこなしてくれればの話だが…」
 では、といって相手は通話を切った。
 緊張が解けて、思わず脱力しかける。
 いい加減慣れたいものだが、仕事の話はいつも緊張してしまう。
 それをほぐすための甘味を取りたくなった。
 ケータイを耳からはずすと、クレープの残りを一〜二口で食べ、口のまわりのクリームを指で拭ってなめたが、足りない。
 50m程さきにある屋台へ行こうか?と迷っていると、レイがチェスをうっている場所から、ヒョコヒョコとヒョロッと背のたかい男‐アベル‐が銀色の髪を陽にポワポワさせながら歩いてくる。
「お友達とのお話しは終りになりましたか?」
「ええ、終わったわ」
 問いかけに答えてから、しみじみ彼を見ると何やら薄汚れた感じがするのはなんでだろう。
「アベル」
「はい、なんでしょう?」

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