Secret Work
よほど知られたくない研究をしていたのか、レジスタンスの襲撃には一切触れていない。
襲撃の目的も果たされていないだろう。
「ええ、わかっています」
依頼主に頷きながら、チェスの愛好家たちの集う場所にいるレイが私を見ていたので、手を振った。
「契約ですから…」
レイが手を振りかえしてくる。
相手がいないのかな?
依頼主との会話とは、関係ないことを考える。
「しかたありませんね…」
半年前に支払われた前払い分の報酬がよかっただけに、そのレジスタンスグループを罵りたくなったが、私のミスもある。
「まあ、一緒に調べてくれた通信コードがうまく行けば、約束の後払いの半分は払う」
「…ありがとうございます」
文句はいうまい。
払ってくれるんだから…。
預金が増えるのは、私にとってはいいことだし。
しかし、平和な公園の風景とは違い、なんと俗で物騒な会話をしているのだろう。
幸い私の座るベンチのまわりには人はいないので、聞かれる心配はない。
数冊の本と新聞を脇に置き、クレープを持つ姿は遠目から見て、読書を楽しんでいたところを、友人からの連絡に邪魔された少女にしか見えないはずだ。
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