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Secret Work
 ただ、アベルがうるさかった。
「お一人では不安です。せめて私をお供にしてください」
「ひとりでだって、大丈夫よ!未開の地に行くわけじゃないんだから!!」
 騒ぐアベルに、私はこう反論したが、聞く耳を持たない。
「仮にもお祖父様は公爵、お父様は侯爵で叔母様には皇妃様がいらっしゃるあなたが、フラフラ歩いていたら、誘拐されるかも知れないって思わないんですか?」
 アベルは、彼にしては珍しく、息継ぎもなく一気にまくしたてると、肩で息をしている。
「ゲットーを通るわけじゃないし、租界のなかの治安のよさは、アベルだって知っているでしょう?」
「油断は禁物です!!」
…アベルの一言に、珍しく屋敷をキリモリする二人とレイが賛同し、余計なオマケ‐アベル‐がついてくることになってしまった。
 仕事がしにくい…。
 
「…で、報酬の後払い分はないのですね」
 ケータイの相手‐依頼主‐に聞こえないようにため息をつく。
 調べた情報に不備があったらしく、依頼主が渡した相手先が襲撃に失敗したらしい。
 私の手元の新聞に、それらしい記事‐医療研究所正門でボヤ騒ぎ‐が小さく書かれている。
 多分、これがそうだろう。

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