Prologue
彼女はメガネをかけ、アルバムを見る。
そして何葉か張られた写真が、私のほうにむけられた。
そのなかの、なにか倉庫のような場所で宴会をしている写真があった。
その写真のはじのほうに小さく写る少女を彼女は指をさす。
「…これが私」
懐かしそうに私に言った。
お世辞にも画質がよいものとは呼べず、荒いそれにいる笑顔の少女は、今の彼女の面影が確かにあった。
「なんの、宴会か覚えていらっしゃいますか?」
「う〜ん、何だったかしら?」
恐る恐る尋ねた私の疑問に答えようと考える。
そして、ヒザをポンと叩く。
「キュウシュウ戦役のちょっと前だわ。ガウェインがあるし」
写真の奥のほうの大きな黒い影を、今度は指さした。
「ゼロの生還祝いって玉城さん、言ってらしたわ」
この人よと、人の輪の中心で上半身ハダカのまま500mlの缶ビールを一気飲みしている人物をさす。
「この写真、お使いになる?」
イタズラっぽく笑う彼女に、私はいいえと断った。
「そのほうがいいわね。じゃないと幹部の方々に恨まれちゃう」
そういってクスクス笑う。
それはまるで、この写真と同じような笑顔を彼女はしていた。
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