[携帯モード] [URL送信]
Interval:1
“一口でいいから、食べてくれる?そうすればこの子、納得してあなたに迷惑かけないから…”
 そう、言われるままビスケットをかじる。
“おいち?”
“うん、美味しいよ…”
 小首をかしげ、問う声に自分は答えた。
 なぜか少ししょっぱかったが、本当においしかった。

 その日から、自分の身のまわりは目まぐるしく変わった。
 奥様の手伝いをするようになり、読み書きや計算を教わることとなり…。
 気付くと、自分から‐奥様の紹介もあったが‐アシャースト家の私設軍の養成所へ行き、そしていまここにいる。
 あの日差し出されたビスケットが、自分を変えた。
 差し出した本人は覚えていない。
 自分を慕い、今もこうして腕のなかに収まっている。
 差し出された自分は覚えている。
 自分へ差し出した小さな手の主とその大事なものを守りたいと、世界中を敵にまわしても味方になりたいと思う自分がいる。
 すべてはあの日から…。
「私はあなたの味方です。マーシャお嬢様」
 そっと手の甲に口づけを…。
 これは儀式…。
 本当の騎士にはなれないが、彼女の騎士として守っていくための…。

“私はあなたのお陰で変われたのです”

[*前へ]

2/2ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!