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第一章
03「もっとrelaxしろ」


部屋にもどった柊は続きをやろうと紙を取り上げた、がその時唐突に眩暈が襲い膝をついた。どうやら熱が出てきたらしい。
でもまだ微熱だったため、夜までは持つだろうと特に気にせず続きにとりかかった。


「一つ。庭院にて以下の薬草を採ってくる」


そこには約30種類の薬草が書かれていた。どれも柊には見覚えのある薬草だったため、容易に見つけることができた。
使い道と言えば治療する際に使うためなので、先に使いやすいよう乾燥させたり漬けたり、そこまでし終える。
そして柊は次の作業へとりかかろうとしたが、またもや眩暈に襲われた。
気づけば熱も先ほどより上がっているようだ。頭がうまく回らず咳も出てきた。
それでもここで諦めまいと三つ目の項目を読み、柊は目的地へ向かうべく医務室をでた。

するとなぜか成実が前にいた。


「成実さん・・・?」


成実は何も言わずに柊の額に手を当てた。
熱があることを知られるのはまずいと思った柊だったが、体の反応は鈍かった。


「本当だ、柊ちゃん熱ある!」
「・・・あ」


否定しようにも遅く、成実は柊を医務室へ戻すと無理やり布団に寝かせた。


「あの、成実さん、熱といっても大した事ありませんから――」
「あのね、そんな顔で言われても全く説得力ないから」


成実の言う通り、いつもは大きな二重の瞳も今は熱のせいか半開きだ。
そしてなぜかすでに成実によって用意されていた桶の水に手ぬぐいを浸して絞り、柊のおでこに乗せた。
不覚にもひんやりと心地良い冷たさに目を瞑ってしまった。


「梵にさ、さっき資料渡しに行ったとき言われたんだ」
「・・・?」
「柊のやつ、やけに顔赤くして上の空で、食欲もないようだったから様子見に行ってやってくれねぇか、ってさ」


政宗の真似を大げさにしながら成実が教えてくれた。

ああ、もしかして小十郎さんに怒鳴られる直前、そのことを聞こうとしていたのかな、となんとなく考えた。
気づかれていたのかと思うと急に恥ずかしさがこみ上げてきた。


「で、病人に聞くのもなんだけど、風邪には何がよく効くの?」
「・・・セイキョウを飲むと、症状が軽くなります・・・」
「セイキョウね!了解。じゃあセイキョウ入りの粥作ってもらうね」


そういって成実は、ちゃんと寝てるんだよ、と念を押し部屋を出て行った。




・ ・・考えてみればなんであたしはこんな無理をしたのだろう。
米沢城に来て初日だったから?来てすぐ体調を崩して寝込んでしまうとは。
わかっていた。風邪の症状が悪化していることも、無理して倒れたら余計に迷惑かけてしまうことも。


ただ、どうしても



「――足手まといに・・・なりたくなくて」







「・・・おめぇはそんなにこの城の連中が怖いのか?」


独り言に返事が返ってきたことに柊は驚き襖のほうを見ると、いつの間にか政宗が壁に寄りかかって立っていた。


「政宗様!?・・・いつのまに」
「柊、おめぇは肩の力が入りすぎだ。ずっと張り詰めた顔してよ。もっとrelaxしろ」
「・・・?」
「もっと気ィ抜けってことだ。
もうこの城はお前の家だ、誰も追い出す奴はいねぇし、仮にそんな輩がいたら俺が叩きのめしてやる。


なにがそんなに不安なのかはしらねぇが・・・



頼れ、なんでもひとりで済ませようとするな。いいな?」
「――頼って・・・いいのですか?」
「Of course」


何を言ったのかわからなかったが、政宗が笑っていたので多分肯定の意味だろう。


「・・・ありがとうございます」
「よし、粥がくるまで寝てな」


柊は言われるまでもなく、ほどよくして眠りについた。
しかし眠りにつく直前まで政宗の気配が消えることはなかった。





柊には、頼るというのがどういうことなのか、よくわからなかった。
今までも大抵の事はひとりでこなして来たし、迷惑をかけないようにと気を張って生きてきた。
それが正しいかなんて、逆に問いただせば矛盾も数えきれないほど生まれてくる気がして、背を向け続けていたのも事実だった。



怖い―――。

役立たずだと見なされて、いつか捨てられてしまうんじゃないか。
泣いてしまえば、面倒くさいと嫌われてしまうんじゃないか。


柊はいつも、そんな不安を胸に忍ばせていた。


米沢城へ来て初日に、いきなり難題にぶつかってしまったように柊は薄れ行く意識の中で思った。



頼れ――か。
そういえば、昔もどこかで――・・・。








暫くして、成実の控えめな声が柊の目を覚ました。
そこにはもう政宗の姿はなかった。恐らく執務に戻ったのだろう。


「柊ちゃん、起き上がれる?粥持ってきたんだけど・・・」
「ありがとうございます」


柊が起き上がろうとすると成実が起きやすいよう腰を支えてくれた。


「はい、じゃあ口あけて、食べさせてあげるよ」
「大丈夫ですよ。ひとりで食べられますから・・・」
「いいの。こういう時は甘えて」


先ほどの政宗と同じようなことを言われた気がして柊は止まってしまった。
その隙を見て成実は粥をすくい柊の口元へ持っていった。
拒否するのも叶わず言われるがまま柊は口を開き、粥を食べた。


「・・・おいしいです」
「セイキョウたっぷり入ってるでしょ?
実は梵がさ、結構な量のセイキョウを小十郎の畑から勝手に採って持ってきてさ。これ全部使えって」
「政宗様が?・・・小十郎さん畑お持ちなのですか」
「小十郎の畑は凄いよ、旬の野菜は豊富に取り揃えてあるから。今度見せてもらうといいよ」


結局成実に最後まで食べさせてもらった柊は、すっかり体が温まり少しばかり熱も下がったようだった。

その後いつまでも医務室で寝ているわけにもいかないので、離れの自室に戻り再び眠りに着いた。




――さっきは驚いて話を逸らしてしまったが、政宗がわざわざ小十郎の畑からセイキョウを採ってきたという話を聞いて、柊はなぜか胸が熱くなった。

政宗が畑からセイキョウを採っている姿を想像して、つい笑ってしまったのは誰にも内緒だ。










―――――――――
セイキョウは生姜の事です。ちなみに管理人は生姜嫌いです!
昔の人は風邪を引くと生姜を食べていたみたいです
成実をいいように使っています、ごめんよ
殿はもちろん日々さぼる方法を考えています
殿がたまたまlunchにヒロインを誘ったのか故意で誘ったのかはご想像にお任せしますw
それにしても殿の出番すくな・・・





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あきゅろす。
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