天と地と6の騎士
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「火の聖霊よ。我の元に集え、我の肉体を媒体にし、主の力、主の精を引き換えに、その力を欲する。炎壁!」
「風の聖霊よ。我の元に集え、我の肉体を媒体にし、主の力、主の精を引き換えに、その力を欲する。風刻輪!」
「土の聖霊よ。我の元に集え、我の肉体を媒体にし、主の力、主の精を引き換えに、その力を欲する。降強岩!」
全員新しく強い力で攻撃し、フェリルの攻撃を相互で打ち消しフェリルを攻撃していく。
なのに、フェリルはまるで薄い膜のバリアで守られているみたいだった。
〈崩れろ、人間〉
フェリルが手の平をこちらに向けると、凄い力で吹き飛ばされた。
そして空の妖魔が一気に襲って来た。
襲って来た妖魔はなんとか倒す。
〈しぶとい人間め、消えろ!〉
俺達はフェリルの攻撃を喰らい全員倒れた。
もう動く気力すら残っていない。
〈たわいない。人は創造主が土の塵から作られた。ならばお前達は塵に戻るがいい〉
フェリルが俺達に手の平を向ける。
また、あの攻撃を喰らう。
もう駄目だ!
そう思って目を瞑った。
パシンッと何かが弾き返された音がした。
「え?い、生きている?」
「よっ!遅くなって悪いな。」
目の前には見知らぬ『人?』がいた。
ただ、そいつはフェリルにそっくりで、でも纏う空気がフェリルとは真逆だった。
「え?」
「なにを驚いているんじゃ?わしじゃ、わし!」
見た事ない美形なのに、ずいぶんと馴れ馴れしい。
だけど……この口調。
「たく、今度の神子様は乱暴な上に鈍いのぅ。」
「も、もしかして……ミニマムエロジジイかっ!」
「ピンポ−ン!もうミニじゃないぞ?神様って呼んで。」
可愛らしく首を傾ける美青年を見て、俺は呆気に取られた。
〈神?ルリフェ、お前が神?笑わせる。創造主の意思に逆らうモノ。〉
「フェリル。確かに『破壊』それが創造主の願いかもしれぬ。だが、わしは修復する者として、この世界を破壊する事などさせない!」
ルリフェと言われた神様はフェリルに向かって、力のような何かを飛ばす。
するとフェリルを覆っていたバリアのようなものが解けた。
〈お前は私、私はお前。私の半身。ルリフェよ。創造主に憧れ、神を真似る出来損ない。〉
無表情のままフェリルは神様に向かって話していたと思ったら、俺の方に向き直った。
〈良く聞け。ルリフェの力を増幅させる者。〉
空中に浮かんでいるフェリルは俺達に向かって語りかけてくる。
〈太古の時、すべての世界が出来る前。
創造主はいくつかの世界を作った。
この世界、お前の世界、もっと沢山の世界。
そして選ばれたのは、他の世界だった。
創造主は選ばなかった世界を破壊するしようとした。
だから爪先で作った『世界を管理するモノ達』の一部を『破壊するモノ』へと変化させた。
その中に2つに割れかけているモノがあった。
割れかけていたソレは世界に落とされる時に2つに割れた。
1つは創造主の思い通りに破壊するモノへと代わり、1つはこの世界を管理するモノのまま修復させようとした。
それが私達だ。
創造主の思い通りに破壊するものとなった私。
そして修復させようとするルリフェ、お前達が神と呼ぶ出来損ないであり間違っている者だ。
創造主の意思にさからう悪はルリフェなのだ。
創造主の願いはこの世界の破壊。
選ばれなかったこの世界は破壊されねばならぬ。
それが秩序なのだ。〉
「違う!」
フェリルの言葉に神様が反論する。
「この世界がある事で何かの理(ことわり)を曲げるのならば、確かに滅ばなければいけない秩序かもしれない。だが曲げる事はない!世界は創造主の手から離れた時点で成長している!」」
〈バカなルリフェ。この世界が滅ぶ事こそ秩序なのだ。〉
「そうかもしれない。それが秩序で俺達は悪なのかもしれない……だけど!選ばれなかったからと言って存在を破壊されるのかっ?!ならなぜ作られたんだ!生きているじゃないかっ!この世界の人達だって、俺の世界の人間と同じように生きている!そんな世界を破壊なんてさせないっ!」
俺の頭の中には、この世界の人達が浮かんでいく。
一緒に働いてくれた食堂のおっちゃん、おばちゃん。
色々な事を教えてくれたアファラ大司祭を始めとする教会の人達。
小さな村の女の子、アイリーン。
王都に居たおばあさん。
孤児の街のリファ達。
沢山のこの世界の人達。
そして俺を守って、共に戦ってくれている6人の騎士達。
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