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アヴィラ
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「有難うカナメ。ここまでで構わないよ、教えてくれて有難う。」

「いえ、俺も探します。人数居たほうが、きっと見つかる。」

私達はカナメの申し出を受け、岩場を捜索し始めた。

少し遠くにアヴィラ軍の兵士達がみえる。

「とりあえず馬車が通れるような場所で、不自然なところを捜索しましょう。」

と私が言うとロイ様は「はい。」と答えて下さった。

色々と探してみるが、特に手がかりもなく時間ばかりが過ぎて焦ってしまう。

「ラファーさん!ロイさん!кббёё!」

カナメが私を呼んでいる。

何かを言おうとしているが、カナメは言葉は昔の様にどこかの国の言葉に変化してしまっていた。

言葉が戻った事に驚いているカナメ。

何かを必死で指差している。

「指差す場所になにかあるのか?」

「ここ。見る。ラファー!石!」

「見ると何かあるのか?石?石がどうしたんだ?」

私がそう聞き返すと、焦ってるカナメはロイ様と私と交互に見比べる。

そして何かを決した様に私の口にキスしてきた。

「んぐっ……!」

カナメの舌が私の口の中に入ってくる。

一体何事だと言うのだ?

プハッとカナメが口を離した。

「ごめんなさい、アヴィラ語を話せて聞ける様になる魔法が切れて……切れてもアヴィラ語を話せる人の唾液を貰えば持続するから。」

申し訳なさそうな顔をするカナメ。

なるほど、流暢なアヴィラ語だと想っていたらカインの魔法だったのか。

すまん、レイス。

不可抗力とは言え他の男とキスしてしまった。

絶対にレイスに知られるわけにはいかないな。

それにカインにも申し訳なく思う。

カインとカナメの関係は、どういうものなんだろう?

と思うと同時にロイ様にされなくて良かったと思う。

ロイ様にキスなんてされた日には……。

そう考えただけでゾワッとするが、どうせどっちにしろ私はキアルーク陛下に斬り捨てられる運命だったと思わず思った。

「いや……別に構わない。それで?石がどうした?」

「石がここから消えたんだ!」

カナメは私達に向かってそう言った。

「消えた?」

カナメの示したところに手を伸ばしてみると、指先が消えた。

「魔術で目くらましがされているらしい。」

「ラファー。行きましょう!」

ロイ様がそう言われる。

私はロイ様の言葉に頷いた。

だが、その前にしておかないといけない事があった。

「カナメ。すいまないが、お願いがある。」

「お願い?」

「ああ。カナメはあの扉で王都に戻って城にいるレイスと言う人物に、この場所の事を伝えて欲しい。」

「レイスさん?」

「ああ、レイス、グレイドルだ。城の誰かに宰相の会わせて欲しいと言えば会える。ラファーの事で緊急な話だと言えばいい。」

「宰相。」

「お願いだ。」

「わかった、伝える。」

「カナメ、色々有難う。」

私はカナメにそう言う。

もう2度とカナメには会えないかもしれない。

そんな気持ちで。

だが、そんな気持ちはあっさりと無視された。

目くらましの中は洞窟のようで、しかも奥深く入り組んだ人工的な造りになっていた。

私達は、そんな洞窟の中を見つからないように慎重に進んで行った。

そして半ばまで来て見たものは、さっき別れたはずのカナメと、そして探していたヴィクトリア様だった。

「カナメ?どうして君が?」

ロイ様が私同様に驚いたのだろう。

だが見つからないように慎重に小さな声でカナメに声をかけられた。

「ロイさん?」

「カナメ?城に戻ったんじゃ?」

「お母様?ラファー?」

私もその後、同じ様にカナメの存在に驚いて、そんな事を呟いてしまった。

「すいません、城に戻れる前に捕まってしまいました。」

カナメは申し訳なさそうに謝罪した。

「何故、カナメまで?」

ロイ様の言葉にカナメが口を開きかけたが、その前にヴィクトリア様が私達に話しかけられた。

「助けに来てくれたのね。」

「ええ、ヴィクトリア様。遅くなって申し訳ありません。助けに来ました。」

私はヴィクトリア様に安心して欲しくてそう言うと、それまで平気そうに振舞っていたヴィクトリア様は、急にポロポロと大きな瞳ながら涙を溢し始めた。

「ヴィクトリア……泣かないで。さぁ、こんなところから早く逃げよう。」

お優しく、母としてロイ様はヴィクトリア様にそう声をかけられる。

「そうです、ヴィクトリア様。早く。」

「ラファー。」

私達はさ2人の縄を切って逃げ出そうと試みた。

だが……。

「そうやすやすと逃がすと思っているのかい?」

そんな女の声がした。

見れば、どこかの魔道師の女が私達4人を睨みつけていた。

「お前達!何をしてるんだい!人質が逃げるよ!」

女はそう叫んで、2人の老人を呼び寄せた。

「残念だったねぇ。ボドリュ卿。可愛い主を救いに来たのに逆に捕まるなんて間抜けだね。え?ヴィクトリア王女の教育係様。ああ、それとも宰相レイス・グレイドルの恋人と言った方がいいかい?」

魔道師は私を見てそう言った。

私がヴィクトリア様の教育係りである事を知っているだと?

私がヴィクトリア様の教育係りだと言う事を知っている人間はごくわずか。

しかも私がレイスの恋人な事は誰も知らないはずなのに。

「何故それを……。」

思わず女にそう呟く。

「調べたのさ。利用出来る人間を作る為にね。」

すると女はニヤニヤとしながら言った。

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あきゅろす。
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