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アヴィラ
25
マーサの言葉で、私は真実を伝えようと思った。

マーサに伝えて、それをマーサがロイ様にお伝えするのかどうか判断するのかはマーサに任せよう。

だが、ここには離宮の入り口を警備している兵がいる。

ヴィクトリア様が戻ってこられない事を知ってるのは、軍全体と城のごく一部の者だけ。

この者達が知って良いのかどうかの判断は私には出来ない。

私が兵をチラッと見ると、マーサは私の意図を汲み取ってくれた様だった。

「私がラファーと話す間、申し訳ないですが少し離れていて貰えますか?」

マーサは兵に向かって、そう言ってくれた。

兵達は、私から離れた城の方へと移動した。

マーサは私を離宮の庭へと引き入れた。

緊急の事態なので、私も庭なら大丈夫だろうと足を踏み入れる。

「ここなら誰も来ないでしょう。それで……一体何があったと言うのです。」

「ヴィクトリア様はここに来られない事を伝えに来たんだ。」

「ラファー?」

「落ち着いて聞いて欲しい。ヴィクトリア様は、3日前に同盟国へと旅立たれて昨日の夜。遅くても今日も朝に戻ってこられる予定になっていた。だが何者かに襲われて拉致されたらしい。」

「そんなっ!」

「今、マルス将軍とキアルーク陛下が全軍を挙げてヴィクトリア様を探されている。だたこの事をロイ様に正直にお話するかどうかでマーサの判断を……。」

私がそう言い掛けると、ガタンッと音がした。

音がした方を振り向くと、そこには1人の男性がいた。

幼い頃の面影を残された優しい顔立ち。

この離宮に男性はたった1人しかいない。

だから、私は彼が誰なのかすぐにわかった。

「正妃ロイ様。」

私はすぐさま跪いた。

「ロイ様!何故、こちらに?ロアーク様と奥の部屋にいらっしゃったのでは?!」

マーサがロイ様に向かって慌てた様子で聞いた。

「マーサがヴィクトリアの事を聞きに行っていると聞いて、追いかけて来ました。ヴィクトリアが拉致されたとはどう言う事ですか!?」

ロイ様は私に向かって問われる。

誤魔化すのは無理だと私は瞬時に判断した。

「ヴィクトリア様をどう言う目的で拉致したのか。何者が拉致したのかもわからない状態です。キアルーク陛下とマルス将軍が現在、全軍を挙げて捜索されています。」

私は跪いたままロイ様にそう報告した。

「僕も探しに行きます!」

その言葉に私は驚く。

「いけません!ロイ様!ヴィクトリア様は必ずキアルーク陛下とマルス将軍が探し出して下さいますので、なにとぞ、ここにいらして下さい。」

思わず、ロイ様に向かってそう言った。

私はロイ様が不安になられない様に、ヴィクトリア様がここに来られない事だけをお伝えするつもりだったのだ。

なのにロイ様まで行方不明になられたら、城だけじゃなく国がパニックになるに違いない。

「僕の子です!ここで待っているだけなんてしていられない!」

「ロイ様!」

マーサが焦った声を出した。

私は必死に考える。

私ですら、こんなにもヴィクトリア様の事が心配なのだ。

ましてロイ様にとっては我が子。

探しに行きたいと思う親心は当然の事だろう。

だが、危険を考えるとロイ様には離宮にいてもらうのが一番いい。

「ヴィクトリア。」

とても心配そうに呟かれたロイ様の言葉に胸が締め付けられる。

「僕の……僕の大切な娘なんです。お願いします、探しに行かせて下さい。」

その言葉に、私はどうするべきかと悩んだ。

今、キアルーク陛下とマルス将軍はヴィクトリア様捜索の為に城を出ていらっしゃる。

ヴィクトリア様を探しにロイ様をお連れする事が出来るかもしれない。

それでも私がロイ様をヴィクトリア様捜索の為に連れ出せば、私の死罪は確定してしまうだろう。

ただですら離宮に入る事すら許されていないと言うのに。

だけど……。

「……ロイ様がいらっしゃらないとわかれば、軍は半分ロイ様を探す事になるでしょう。それでは見つかるものも見つかりません。なのでマーサ。ロイ様はお体の具合が優れずに床の伏せてると言う言い訳をしてキアルーク陛下とお会い出来ない事を伝えて時間をかせいで下さい。」

「ラファー、あなた一体何を。」

「ロイ様、ロイ様の心中お察しします。私でさえこんなにもヴィクトリア様の事が心配なのです。ましてやロイ様にとっては我が子。私がお止めしたところで離宮を抜け出す気でいらっしゃいますね?」

「ヴィクトリアは僕の子です!僕とキアルーク様の大切な子!我が子がいなくなったと聞いて、こんな離宮に閉じこもっていられない!誰が止めても僕は行きます!」

私は深く息を吸い込む。

うっかりと話を聞かれてしまった私に責任がある。

すまない……レイス。

私の死罪は、今、確定したようだ。

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あきゅろす。
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