アヴィラ
24
「ラファー!」
「こんにちは、ヴィクトリア様。いよいよ来週ですね。」
「ええ!とても嬉しいわ!」
ヴィクトリア様は来週4歳のお誕生日をお迎えになる。
来週は去年のように国を挙げての祝福をお受けになるだろう。
それに伴ってヴィクトリア様は明日、同盟国の王女とお会いになる為にお出かけになるのだと言う。
出かけられる先の同盟国は、大昔、それこそアヴィラが世界で3番目に小さな国だった頃に庇護してくれていた国。
アヴィラは大きくなったが、過去の感謝を込めてあちらの王女がアヴィラに来るのではなくヴィクトリア様が向こうの国へと出かけられる事へとなったのだ。
「ああ……心配です。やはり私も付いて行った方が。」
「駄目よ。ラファーにはラファーのお仕事があるんでしょう?私にはエルザと言う優秀な乳母がついているわ。だから平気よ!」
私の心配を吹き飛ばす様にヴィクトリア様はそうおっしゃられた。
「だから、ちゃんとラファーはお仕事してね。そして来週、私のお誕生日を祝ってくれるのでしょう?」
「ええ。」
小さな腕を広げて、ヴィクトリア様は私を抱きしめて下さった。
翌日、ヴィクトリア様は馬車に乗って同盟国へと旅立たれた。
「それにしても間の悪い……キアルーク陛下もマルス将軍もレイスもカインも皆出かけている時にヴィクトリア様、お1人がお出かけになるなんて。」
まぁ、マルスは明日に戻って来てヴィクトリア様を追い警備に付く予定になっているのだが。
向こうの同盟の国で、少し早いお誕生日を祝ってもらうヴィクトリア様。
ただ、それだけの事なのに…この不安感はなんなのだろう?
4人の英雄が城にいないからか?
きっと、あさってヴィクトリア様が無事に戻って来られたらこんな不安なんて吹き飛ぶと私は自分に言い聞かす。
3日目に帰ってこられたら、ヴィクトリア様はロイ様に会える日。
それが一番のお誕生日プレゼントに違いない。
そう思っていたのに……。
3日目になっても、ヴィクトリア様は戻って来られなかった。
城の中がざわめき、キアルーク陛下の怒声が響く!
「ヴィクトリアが戻って来ないとはどう言う事だ!」
「申し訳ございません。ただいま調査中ですが同盟国からお帰りになる前に行方不明になられた模様です。」
傍にいたレイスがキアルーク陛下にそう言った。
「キア!」
バンッと扉を開けてマルス将軍が戻って来た。
昨日ヴィクトリア様を警備する為に跡を追ったはずのマルスはヴィクトリア様と一緒ではなかった。
「ヴィクトリアは俺が彼女に追いつく前に何者かに襲われ拉致されたそうだ。乳母のエルザが刀傷を負いながら守った様だが気を失っている間に何者かに連れ去られたと。」
「何者なのかわからないのか?」
「まだわかっていない。今、軍の全てを挙げて全てを捜索している。」
「全ての軍を出せ!レイス、ここを任せた!」
そう言ってキアルーク陛下とマルスは飛び出して行く。
私は思い出した。
今日は本当ならばヴィクトリア様はロアーク様と一緒にロイ様に会われる日。
きっとヴィクトリア様が来られない事をロイ様は不安に思っていらっしゃるに違いない。
何も知らされていないロイ様。
せめてヴィクトリア様がロイ様に会えない事だけでもお伝えしなければ。
そう思って、離宮へと足を運んだ。
そして離宮の前でどうするべきかと考える。
マーサにヴィクトリア様が来られない事を伝えるにしても、どう伝えればいいのだろう?
やはり正直に話すべきなのか?
兵が警備する離宮の前でそう考えているとマーサが出てきた。
「ラファー、なにやら城が騒がしい様子。何が起きたのか知っていますか?それにロアーク様はこちらに来られたのにヴィクトリア様がまだ来られないのです。」
「マーサ。」
「ラファー、何があったと言うのですか?」
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