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アヴィラ
21
「カイン?」

カインはなにやら城の衛兵達と話している様だ。

「じゃあラガバス卿が連れて来た異国人は、この後宮に?」

通りがかりにそんなカインの言葉をうっかり聞いてしまった。

異国人?

カナメの事か?

「カイン、カナメを探しているのか?」

「ああ、ボドリュ卿。ええ、ラガバス卿が連れて来た異国人を探しているんです。後宮にいるらしいですね。」

「どうしてカナメを探しているんだ?」

「それは……今は貴方にも話せません。」

カインは私にそう言って、どこかへと去って行った。

カインはどうしてカナメを探しているんだろう?

カナメとカインの面識はなさそうだ。

カインはラガバス卿が連れて来た異国人を探していると言ったのだから。

そんな事を考えて、その場でボンヤリとしていたら、すぐにカインは戻ってきた。

「ボドリュ卿、すいませんが、そのカナメのところに案内してもらえますか?」

「何故?」

「キアルーク陛下から彼を貰い受けました、珍しい異国人なので私の屋敷に連れて帰ります。」

「カインの屋敷に?連れて帰ってどうする気なんだ?」

「野暮な事言わないでもらえませんか?それとも言って欲しいんですか?レイスが貴方にしてる様な事をさせる為に連れて帰るんですよ……と。」

ふふふっと笑いながらカインは言った。

「キアルーク陛下の許可を得て、正式に彼は私の物になったんです。まぁ、ボドリュ卿が案内して下さらないなら、それはそれで構いませんが。別に他の人間に頼めば済む事なので。」

「わかった、案内しよう。ただ、約束してくれ。」

「何をですか?」

「カインの屋敷に連れて行ったとしても、カナメに……彼に優しくしてあげて欲しい。」

「ええ、約束しましょう。優しく彼を守りますと。」

そんな会話をして、私はカインを伴ってカナメの後宮の部屋へと入った。

カナメはカインを見て、怯えた顔をする。

キアルーク陛下からカナメを貰ったと言うカイン。

アヴィラには奴隷制度などないがレイスが私にしている様な事……と考えると、そう言う行為をさせる為に連れて帰るんだろうと思い自然に眉をしかめてしまう。

「こんにちは、貴方は今日から私の屋敷に来る事になりました。キアルーク陛下より正式に貴方は私の物にな「カイン、彼はアヴィラ語が理解出来ないんだ。」」

カナメに向かって説明しようとしているカインにそう言うとカインは説明をやめた。

そして、軽々とカナメをお姫様抱っこする。

驚き、そして何度も不安そうな声でラファーと私の名前を呼ぶカナメ。

カインは移動呪文で彼を抱きかかえたままどこかへと飛ぶつもりなのか呪文を唱え始めた。

アヴィラ王国一の魔道師であるカインは人を1人抱えて魔方陣や力を増幅させる魔法石を持たずに移動する事が出来るみたいだ。

「カナメ、大丈夫だから。元気でいるんだよ。」

と伝わる事はない言葉をカナメに掛けてバイバイと手を振った。

その瞬間シュンッとカインは部屋からカナメと抱きかかえたまま消えた。

私はカインとカナメを見送った後、後宮を出た。

少しの間だったが面倒を見ていたカナメが居なくなって寂しい気がした。

カインの行動にカナメが傷付かなければいいと思う。

いや……カナメにとっては、この敵ばかりの後宮よりもカインの傍の方がきっと安全に快適に暮らせるはず。

カインは約束を破るような男ではない。

死神の鎌と呼ばれる男ではあるが、レイス同様にカインが信用出来る男なのはキアルーク陛下の信頼のあつさからもわかる。

後宮を出て歩いていると私の前に人影が現れた。

「中々連絡して貰えなかったので、思わず私から現れてしまいました。」

そんな美声を聞いた。

「良かった。凄くレイスに会いたい気分だったんだ。」

私はレイスの顔を見て笑った。

「異国の彼はカインが連れて行ったのですか?」

「知ってたのか?」

「ラガバス卿が連れて来た時に見たのと、貴方が構う様になったと聞いてから見ていただけですが……結構嫉妬したのですよ。私を放って異国の人間なんかに構っていると聞いて。」

「それでも、私の好きにさせてくれたのか?」

「ええ、私の好きな人は優しくて甘い人ですから。」

フッとレイスは笑いながらそんな事を言った。

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