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アヴィラ
16
でも、きっとキアルーク陛下は何も変わっていらっしゃらないのだ。

あの小さな頃に、凍りつく池の中で首飾りを探されていたロイ様を見つめていらっしゃった頃と変わられていない。

そして……ロイ様も。

初めてお会いした時の、あのお優しい方のまま成長されたのだろう。

だから、お二人のお子様であるヴィクトリア様もこんなに聡明でお優しくていらっしゃる。

ルイラ様のお孫様に当たるヴィクトリア様がロイ様とキアルーク陛下のお子で良かったと本気で思った。

「私も、お母様がお母様で、そしてお父様がお父様で良かったと思っているわ。」

ニッコリと笑われてヴィクトリア様はそんな事をおっしゃる。

私は嬉しくて微笑み、頷いた。

それから数週間が経ち、昨日ヴィクトリア様は、またロイ様のところへと行かれたようだった。

だが、お気に入りのはずの絵本を持っていらっしゃらない。

どうされたんだろうか?

ロイ様のところに置いて来られたのだろうか?

「ねぇ、ラファー。」

「はい、ヴィクトリア様。」

「昨日ね、お母様にお願いをしたのよ。」

「お願い……ですか?」

「ええ。」

「ロイ様にどんなお願いをなさったのですか?」

「私にはロアーク殿下と言う弟がいるけれど、エルザもラファーもロアーク殿下と呼びなさないと言うし、敬語で話しなさいと言うでしょう?」

「それは当然です、ヴィクトリア様。アヴィラ王国の王位継承権は生まれた順ですが、女性は男性よりも下になります。なので、ロアーク王子殿下が次の国王になられるのでヴィクトリア様は弟君と言えど気軽なご兄弟と言うわけには行きません。」

「わかっているわ、何度もラファーにもエルザにも言われたもの。ロアーク殿下は私の可愛い弟だけれど、私は家臣として振舞わないといけないのでしょう?」

「そうです、ヴィクトリア様。」

「だけど、お母様は私がロアーク殿下に敬語で話すと凄く寂しそうな顔をされるわ。」

「ロイ様の元にいらっしゃる時にだけでしたら、ご兄弟として過ごされてもよろしいかと存じます。」

「はーい。」

「それで……お願いとは?」

「そうよっ!お母様にお願いしているの!」

「ですから……何を?」

「妹よ!」

「え?」

「ロアーク殿下は次の国王様で弟といえど気軽には遊べないでしょう?それに男の子だし。なので『絵本の次は何が作って欲しい?』とお母様に言われたので『妹!』って答えたのよ、だって妹だったら次の国王にはならないでしょう?それに一緒にお人形さん遊びも出来るわ!ねぇ、ラファー、妹ってどれぐらいで出来るものなの?次のお母様に会える日には出来ている?」

ヴィクトリア様の言葉に私はあんぐりと口を開けた。

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あきゅろす。
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