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アヴィラ
2
「ロイ!」

「レミさん。すみません、迎えが来たようなので失礼します。」

そう言って彼は迎えの彼女の元へと走って行った。

「あの、彼等は?」

私は自分の近くにいた城の下働きらしき男に声を掛ける。

「あぁ、マディス王の二番目の子供であるロイ様と下働きのレミだな。」

「え?では彼は第二王子。」

「いや、下働きのアンが産んだ子でね。本当は城から出されるはずだったんだがアンの身体の調子が良くなくて、アンの調子が戻るまでと言う条件で城に置いて貰っているらしい。アンの親友だったレミがアンの変わりにロイ様の面倒をみているんだ。」

「そうなのですか。」

「ああ、ロイ様はいい子だよ。王子として認められてないから、他の王子や王女にからかわれたり、いじめられている時もあるし、城の人間につらく当たられる時もあるようだけれど、そんな泣き言、一度も言った事がない強い子だ。」

「彼は何歳なのですか?」

「たしか7つじゃなかったかな?」

キアルーク殿下よりもたった1つ年上の子供。

「教えて頂いて有難うございます。」

私はキアルーク殿下の元に戻ろうとマディス城の庭を探した。

そして、手をギュッと握り締めて泣かれているキアルーク殿下を見つけた。

「キア……。」

声を掛けようとしてやめた。

さっきの子のように強くなって欲しい。

ならば、今のコレはキアルーク殿下が解決しなければならない事。

キアルーク殿下を見守っていたが、キアルーク殿下は泣きながらマディス城の中へと入っていかれた。

私は自分の他の従者に声をかける。

「キアルーク殿下はどうされたのだ?」

「あぁ、私達も離れていたのでわからないのだが、どうもマディスの王子と遊ばれていて、池にあのルイラ様の形見の首飾りを落とされてしまったらしい。」

「首飾りを?」

「あぁ。どうする?池に入るにも今はこんなに極寒だ。」

そう私達が話していると、後ろで幼い声がした。

「池に首飾りを落とされたんですか?」

「え?」

振り向けば、先程のロイ様だった。

「あんなに泣かれているぐらい大切だった母上様の形見なら、きっと凄く大切な物なのでしょうね。僕に探させて貰えませんか?」

「え?いや、でも……。」

「僕は先程、泣かれているのに慰めのお声をかける事すら出来ませんでした。だから、せめて。」

ロイ様はそう言ってくれる。

「ロイ。」

その言葉に傍にいたレミと言う彼女が心配そうな声でロイ様を呼んだ。

「いいよね?レミさん。」

「言い出したら聞かない子だから仕方ないわ。風邪引かないでね?」

そう言ってロイ様は服が濡れるのも気にせず池の中へと入っていかれた。

大の大人ですら躊躇するほどの寒さの中、7歳の子供が池の中に入って、どこにあるのかわからない首飾りを探してくれている。

そう思うと胸が締め付けられた。

ふとさっきの言葉を思い出した。

「ロイ様は強い子だよ」と。

キアルーク様にもそんな強さを持って欲しい。

そう思い私はマディスの城の中に与えられた客室にいらっしゃったキアルーク殿下を「見て欲しいものがあるのです。」そう言ってお呼びした。

「あれは誰?」

キアルーク殿下は私にそう聞かれた。

「マディス王の二番目の子供であるロイ様と下働きのレミと言う者だそうです。ロイ様はキアルーク殿下よりも、たった一つ上らしいですよ。」

「どうして私の母の首飾りを探してくれたの?」

「キアルーク殿下が首飾りを失くされて泣かれていると私達が話していたところ、ロイ様が探して下さったのです。先程、泣いていらっしゃるのに慰める事も出来なかったとおっしゃられて。」

私はキアルーク殿下にそう言った。

ロイ様の行動を見てキアルーク殿下が何かを感じてくださればいいと、そう思いながら。

そうしているとロイ様は首飾りを見つけて下さったようで、それをレミに手渡していた。

私はキアルーク殿下に「さぁ、彼女が部屋に首飾りを持って部屋に来ますから戻りましょう。」と声をかけた。

後ろ髪を惹かれるように振り向きながら、キアルーク殿下は部屋に戻られ、彼女から首飾りを受け取られた。

母国への帰り道、馬車の中でジッと首飾りを見つめていらっしゃったキアルーク殿下。

きっと何かを感じて下さったのだろう。

それからと言うもの、キアルーク殿下は変わられた。

泣かれる事は無くなり、強く賢いお子様になられた。

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