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アヴィラ
=sideラファー=
sideラファー・ボドリュ

ボドリュ家はアヴィラにある上流階級の家であり、その家の嫡男に生まれた私は9歳で王宮に上がった。

そこで正妃ルイラ様に恋をした。

美しく、お優しい正妃ルイラ様。

優しく微笑まれる度に私の鼓動は高まった。

だが、相手は正妃様。

一生、叶わない恋だった。

私が王宮に上がってすぐ、ルイラ様はキアルーク王子殿下をお産みになられた。

お優しいルイラ様が大切に育てられたキアルーク殿下。

12歳のある日、私は先代の陛下に呼ばれた。

3歳になられる王子の従者として、王子に仕えて欲しいと。

私は喜んでと返事をした。

キアルーク王子殿下にお仕え出来る、数人の従者の一人に選ばれたのは光栄な事である。

キアルーク殿下の従者と言う事はルイラ様に会う機会も多い。

「ルイラ様の大切なキアルーク殿下、しっかりとお仕えしなければ。」とそう思いながらお仕えし、幸せな毎日を送っていた。

ルイラ様の大切なキアルーク殿下は、少しお泣きになる事も多いが優しいお子様だった。

私は、お泣きになられたキアルーク殿下をルイラ様が抱きしめられているお姿をみるのが好きだった。

まるで、美しい一枚の絵画のように見える。

だが、幸せな時間はそう続かなかった。

私が15歳、キアルーク殿下が6歳になられて少したったあの日。

城の中に隣国である大国トィーラの刺客が入り込み、ルイラ様はその混乱で刀傷を負われた。

「ルイラ様!」

「キアルーク……私の子は無事?」

「ご無事です!話さないでください、賊は捉えました。今、医師と魔道士が来ますから。マーサ!ルイラ様がっ!!」

「お願い……キアルークを。りっぱな王に、約束……。」

「はい、ルイラ様。必ずやキアルーク殿下をご立派な王に。駄目です!!ルイラ様!ルイラ様!!!」

ルイラ様は、あの時亡くなられた。

私はキアルーク殿下を必ず立派な王にすると、ルイラ様と約束した。

ただキアルーク殿下はルイラ様を亡くされた為に、お泣きになられていない時間がないほど塞ぎ込まれてしまった。

「キアルークは、また泣いているのか?」

先代の陛下は、従者の私達に聞く。

「はい、陛下。」

「あんなに弱くては、将来このアヴィラは消滅してしまう。」

「ですがキアルーク殿下はルイラ様を亡くされて間もないのです。塞ぎ込まれて当然です。」

「ルイラもだったが、マーサもお前達もキアルークに甘過ぎだ。」

「はい、申し訳ありません。」

「だが、放っておくわけにもいくまい。明後日からの諸国の会談にキアルークも同行させるとしよう。お前も付いてくるように。そのつもりで。」

「はい。有難きお言葉。」

そう言って先代の陛下は、キアルーク殿下を諸国に連れて行かれた。

そして、その中の一国。

マディスに行かれた、あの時。

キアルーク殿下が変わられたのは、あの時からだ。

王同士の会談に子供は入れない。

マディスの王の計らいで、会談の間キアルーク殿下はマディスの王子達と庭で遊ぶ事になった。

その胸を伝え、キアルーク殿下をマディスの城の庭へとお連れしたのに、キアルーク殿下
はルイラ様の首飾りを手に、庭の隅で、ただただ泣かれているだけだった。

「キアルーク殿下。」

「よい、お前達、少し一人にしてくれ。」

「はい。」

私達はキアルーク殿下のお傍を離れた。

「何故あんなにお泣きになられているんですか?」

そう聞いてきたのはキアルーク殿下とあまり年の変わらない子供だった。

「キアルーク殿下は、最近、母上様を亡くされてしまい塞ぎ込まれているのです。」

「母上様を。それなら僕も泣いてしまうな。」

そう言って彼はキアルーク殿下の元へ行こうと数歩歩きだして足を止めた。

「どうしたのですか?」

「いえ、お声を……と思ったのですが、僕の母はご病気であまり逢えませんがちゃんといらっしゃるんです。そんな僕があの方になんと声を掛けて差し上げればいいんでしょう?」

「そのような事……。」

「あっ。」

私が『気にしないで声を掛けて差し上げて下さい。』と言い切る前に、キアルーク殿下が金の髪をした男の子に手を引かれて去って行かれた。

「よかった。イーラ様とお友達になられたみたいですね。」

そう言って幼い彼は優しく笑った。

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あきゅろす。
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