ジンとペットの私(裏夢小説)
いきなり変な事


「愛で世界は救えない。わかるか? マロン」


唐突に私に向かって、ご主人様のジンは愚痴をこぼし始めました。


いきなり変な事を言い出すのはいつもの事なので、私はおすわりの状態でわん、と返事をしてあげます。


「愛で救えるほど、この世界は単純ではないのだよ。つーかね、愛で何かできるわけねぇーだろが! そうほざく奴は偽善者だ! 愛なんて精神論はこの物理世界のおいて皆無だ! 人を救うは金だ! 食料だ! 触れる事が出来るもんだ!」



また何か嫌な事でもあったのだろう。


過去からの経験からそう推測できる私は、正直飽き飽きした気持ちになりました。


だけど、無視すると余計へこんでしまうので、わんわん、と神妙に答えます。


「わかってくれるか? わかってくれるんだな……流石は俺の愛するわんこだ。はは、マロンみたいな女の子が人間だったらどんなに素敵か。……現実の女はクソだ!


気のあるような台詞で巧みに相手を騙し、金品を貢がせた後、お友達でポイだ! 打算でしか男と付き合わねぇんだよ!


チクショウチクショウ……!


愛の強さ=財力なんだよ!」


どうやら、ご主人様は昔の事を思い出してしまったようです。


涙まで流しています。しょうがないので私の前で跪き、思い違いも甚だしいご主人様の頬を舐めて、慰めてあげます。


しょっぱい味がしました。


「マロン……ありがとう。そうだな。過ぎ去った出来事に何を嘆く、俺。そんな暇があるなら、マロンと俺の飯を作るべきだな」


開き直ったご主人様に、やれやれとマロンはため息をつきます。


精神がいささか弱いご主人様を持つと、飼い犬の気苦労が絶えません。


まあ、そういう所はキライじゃないんですけどね。


むしろ、私に甘えてくれるから嬉しいかも。


「愛なんて幻想で幻覚だ。」


などと叫びつつ、台所に立つジン。


愛を飢えている人ほど愛を否定すると、どこかで訊いた事があるのですが、ご主人様を見ていると、それが的を射ているような気がしてなりません。


できるなら、その寂しさを私が埋めてあげたいのですが……。

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あきゅろす。
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