降谷に抱かれて(裏夢小説)
ちょ、ちょっと待って


「いや〜。本当にあと一週間で結婚ですかぁ。何か心残りとかないんですか?」


美紀は、何の気なしに零に尋ねてみた。


「う〜ん。心残りか〜。そうだな・・・。」


両手をポケットに入れながら歩く零は、軽く上を向いて悩んでいたかと思うと。急に立ち止まる。


それにつられて、美紀も立ち止まる。くるっと横を向く零。


「心残りといえば、お前を抱いていないことぐらいかな」


そう真顔で言うと、ポケットから右手を出し、寒さに胸の前でこすり合わせていた美紀なの左手をぎゅっと握った。


開いた口が塞がらないとはこのことだとばかり、美紀はぽかんとした顔をして、零を見つめていた。


そんな美紀に、零はニコッと微笑みかけると手をつないだまま歩き出そうとする。


「ちょ、ちょっと待ってください!」


ようやく我に返った、美紀が引きずられまいと、左腕を引く。


「何?」


涼しい顔で答える零。


「何ですか?この手!それと、さっきの答え!」


「何って、お前が聞いてきたんだろ?心残りは?って。だから、それが答え。で、せっかく心残りを思い出したから、心置きなく結婚できるように、実行に移そうと思って。」


「はあ?」


「うん。だからホテル行こう?」


またまた開いた口が塞がらない美紀。


「な、何を言ってるんですか〜?」


美紀の怒りが渋谷の街に響き渡る。ほどでもなく、渋谷の雑踏は痴話げんかにも見える二人の会話をそのまま風景に溶かし込んでいく。

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