降谷に抱かれて(裏夢小説)
かっこいいなぁ


「心残りといえば、お前を抱いていないことぐらいかな。」


零は真顔でそう答え、美紀の手を取った。


美紀は呆気にとられるしかなかった。


11月ともなれば、東京でも朝晩はかなり冷え込む。暖房の効きすぎた電車やビルと、外気との差もまた体感温度を下げる原因かもしれない。なんとなく人恋しい季節なのは、そんな温度のせいかもしれない。


美紀は、公安警察に勤務し、1つ上の零とペアを組み仕事すること3年。


美紀と零は、有名なペアだ。なぜ有名かは、もちろん成績が良いこともあるが、零本人の資質によるところも多い。


零は、男も認めるほどのイケメンで、当然女子からの人気も高い。


性格は基本優しく、仕事には一生懸命というモテる男の条件をいくつも兼ねそろえた男であった。


実際、相当モテている噂はあり、お持ち帰り率が異様に高いとか、何人も彼女がいるとか、浮いた噂は絶えなかった。


美紀も当初からカッコいい先輩の一人として見ていたが、本当に見ているだけだった。


地方の田舎町出身で、見た目も人並みな自分とは、あまりに住む世界が違う人という感じが強く、恋愛感情とは程遠いところにその存在があったからだ。


そんな美紀と零は、3年前からパートナーとして仕事するようになった。


零が女性とペアを組むのは初めてのことであり、当初まわりの女子からは、かなりうらやましがられた美紀であったが、仕事には厳しい零とのペアは、まわりからうらやましがられるようなものとは程遠く、恋愛感情どころか闘争心を燃やさなければついていけないほど、一生懸命に働くことに終始していた。


それでも、ふとした瞬間に零を見ると、あまりのかっこよさに、改めて『かっこいいなぁ』と見つめてしまうようなことは多々あった。


厳しい捜査も、脂ぎったオヤジに言われるのではなく、零に言われ るからこそ耐えてきた部分もある。


そうしてがんばる美紀は、周囲から見るとまるで女房役のように零の世話を焼いているらしい。


零が「あれ。」「それ。」と指示するだけで、その要望に答え、スケジュールの管理からフォローまで、『零は美紀がいないと仕事ができない。』とまで言われている。


そのあたりも有名ペアに挙げられる所以であり、当の本人達もそこまで思っていないものの、中々のパートナーだという自覚は持っていた。

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