ぺニスの王子さま(裏夢小説)
不二。甘。微裏
HRが終わり、皆チャイムが鳴る時に近付くにつれ、周りがソワソワと落ち着きを無くしていく。あたしも、その内の一人である。
窓の側の席にいる不二君は、窓から入ってくる冷たい風など全く感じさせないほど、髪を風に靡かせて。
友達(友):なーに見とれてんの??
「うわっ!?」
いきなり視界に入ってきた友達に驚いて椅子ごと倒れるのを何とか踏みとどまりながら、友達はあたしの視線の先ある物を見つめた。
友:あー不二君かぁ…
頬杖をついて、ニヤリと綺麗な歯を出して笑った友達を見て、からかわれるんだと確信した。
友:不二君はいいけどぉ…。
狙ってる子、沢山いるからねー。
周りのプレッシャー。ユカ、耐えられる?
チラッと向けられた視線は以外にも、あたしの事を心配してくれていた。
『…まぁ、チョコ、渡すだけだし?なんとかなるよ』
友:言っとくけど、女は怖いよー?まぁ、諦めるかどうかは、ユカの気持ちの強さだけどね。
まぁ、頑張ってみるよ。と、言ってみたものの、いざ渡すかと思うと、イヤと思うほど自分の鼓動が全身を駆け巡り、秒針がカチカチとカウントダウンを始める。
━キーン…━
チャイムが鳴ると同時に女子達は立ち上がり、決意を決めたかのように自分の想い人の元へと向かっていった。
あまりの勢いに、あたしも男子も呆気にとられていた。
友:ユカ、いいの?不二君へ群がる、あの女の群。
『え?』
フと見ると、不二君は、あたしからじゃ何処にいるのか解らなくなるくらいに、凄かった…。
『…。』
友:…(溜息)今はやめとけ?
友達は同情というかあそこまで燃え上がれる女子達に感心したくなると苦笑いして見せた
『うーん…この後が無事にあるのやらι』
友:…まぁ、大丈夫なんじゃない?
友達は女子に群がられてる不二君に視線を戻し、口元だけで笑っていた。
友:で?どんなのよ?
催促されるがまま、鞄に手を突っ込んで無造作に手を動かして其れらしき物に触れ、取り出した。友達は手に取り、観察する
友:へー。ユカのわりには、シンプルなの選んだんじゃん。
『男の子にあげるんだもん。女の子Aなものなんて、渡せないよ』
友:確かに。相手のこと考えないで渡すだけってのは…本人も嬉しくないわなぁ。
と、言う友達の言葉に、あたしは少し苦笑した。
あたしは自分に素直になるために。
あの子たちだってそうなのだろうね。
バレンタインはそのキッカケ。
だから、もう少し恋というモノに甘えたがってるのかもしれない。
友:当分、押し寄せてる波は終わりそうにないねι
『…此処にいてもしかたないかな(苦笑)』
げた箱にでも入れておこうと、席を立とうとしたとき。
友:いや。その必要は、無いみたいだよ。
『なんで?』
友達は、あざ笑うかのような笑みで、不二君がいると思われる先を見ていた。
「あれ?ユカは誰かに、チョコ、あげないの?」
いつも密かに聞き耳をたてて聞いていた声が頭から聞こえてきて、思わず固まってしまった。
友:おい…ι固まってどうするよ
体中の熱が一気に顔に集まってきて、動くことも出来なくなっていて…。
「大丈夫?顔、赤いけど熱でもあるの?」
突き刺さる背後からの殺気。伸ばされた不二君の手から顔を背けて逃れ、急いで鞄を掴む。
『だっ、大丈夫だから!!/////』
友:おまっ!!
友達に腕を捕まれ引き留められる。振り返ることもなく、俯いたまま、
『い、いいから!行こ?』
お願いっ!!帰るって言って!もう此処から離れたい!!
『ぃた…』
腕を掴む力が強くなって、思わず振り返ると不二君や取り巻きもこっちを見つめていて、さらに顔が赤くなるのを感じた。
「待ってよ」
『な…。ふ、不二君…な、なに?』
必死になって笑ってるつもりだったけど、自分がどんな顔して喋ってるのかさえ分からないほど、頭はグルA回っていた。
友:不二君。後ろのあの子達を、なんとかしたら?
「え…?」
振り返ると女の子達が心配そうに不二君を見つめていて。
それでも不二君は。
「ごめんね。
今日は受け取れないみたいだから」
不二君の優しい笑顔と声音で女の子達は黙ってしまう。再びこちらに振り返り、優しくも切なそうな顔をした不二君。
『な、なんで…そんな顔するの?』
分からない。
なんで貴方がそんな顔するの?
泣きたいのはこっちなのに。
大好きだから…。
泣きたいよ。
伝えたいのに。
言えない。
大好きだから。
言えない。
「ユカは…なんで泣いてるの?」
『……‥。』
言葉を知ってるのに
言えないから。
触れられるはずなのに
触れられないから。
あの子達みたいに
勇気がないから。
目を閉じると滴が落ちて、小さな球となって床に落ちていく。不二君の指が目元にソッと触れ、涙を拭ってくれた。顔を上げると、すぐ近くに不二君の顔があって、一歩、下がろうとしたけど、腕を掴まれてて身動きがとれない。怖くなって顔を背けて。
「よかった」
不二君があたしの肩に頭を預けて小さく呟いた。不二君の言ったことの意味が分からなくて黙っていた。
「ねぇ、僕のこと…嫌いなの?」
なに…言って…‥?
肩に預けたまま不二君はあたしの言葉を待っていた。
『な、んで…?
そんな…。
あ、あたしはっ』
不二君は顔を上げあたしの目を真剣に見つめていてくれた。ついつい、反らしたくもなったけど、今は真剣に。
『あたしは不二君が好き…』
言った途端、ダッと涙が溢れてきて、とても不二君に見せれるような顔じゃなくて、俯いた。でもそれは不二君の手によって阻まれた。両手で顔を包むようにして。お互いの顔がハッキリと見える。
あたしは涙で視界が歪んでいたけど。
不二君はソッと触れるだけのキスをくれた―…。
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