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確かにあいつは私の隣にいる。


そう、思っていたのに。




















あいつが生まれた時、もう私は世界の一つとして組み込まれていたはず。一緒にいて当たり前の幼なじみ。私はそう思っていたし、少なくともあいつだってそう思っていたと断言出来る。

ただし、過去形で。



科学に没頭していて、恋愛なんていう甘い麻酔なんかは不必要、むしろ邪魔だと考えていたはずの私の中にも確実に成長が訪れ、私は知らない間に子供から女の人へと移り変わっていた。それはもちろんあいつにだって訪れる転換期(ただし、進む道や最終的なゴールは異なっているけど)であって、生まれてからずうっと私が大きかったのに、17歳の夏についに抜かされた。あいつは15歳だった。

その時、ほんのちょっと高い目線で私を見つめたあいつは、とても嬉しそうにこう言ったの。

「もうオレだって子供じゃあないんだぜ」

それまで事あるごとに私はあいつを子供扱いしていたから、きっと彼なりの反抗だったんだろう。
けど、そんな特に大した事ないはずの言葉が私の心の鉛になった。いつも一緒にいて、姉弟のように育ってきていた彼からの離別の言葉に思えて。これから彼はどうなるんだろう。背を比べるためにずっと使ってきた私の家の柱、それに刻まれた一番新しい印、私の名前の書かれた傷。そのちょっと上に、嬉しそうに新たな傷を作るあいつの後ろ姿が遠く感じた。


時が流れていくにつれてますますあいつは大人になって、柱の傷の差も段々開いていく。その開いていく差は心の距離にもとれて、もどかしさや不安も段々積もっていく。それをごまかすために私は研究に没頭して、事あるごとに実験と称してあいつを呼んだ。
文句を言いながらもあいつは絶対に来てくれて、どんなにひどい目に遭わせても(これは事故だから故意じゃないけど)弱音や本気の怒りは見せなかった。何だかそれが無性に嬉しくて、ますます発明に没頭するようになった。






そうして出来上がったのが、
超次元物質転送装置。






この発明が完成した事によって、何かが始まった。予想外の大事故、予想外の展開、予想外の世界。それに予想外の登場人物。

ふわりと現われたあの娘はほんの数日ですっかり私達に溶け込んで、私ともすっかり仲良くなった。その笑顔に悪意はないし、立場故に持ち合わせた好奇心や幼さは可愛いと思った。

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