へこんでなんかいられるか!

「ん…」


目を開けてみるけど周りが真っ暗なのか、目隠しがされているのか、目を開けれていないのかなんなのかわからないけど、真っ暗だ…。


「ここ、どこ…」


反響しないってことはべつにコンクリートのところに閉じ込められてる、とかじゃないんだよね…。で、私なんでこんなことになってるんだ?


とりあえず、その場で膝を抱えて今まであったことを思い出してみる。とりあえず、自分の紗子はわかる。


私は、平石紗子。大学2年生で、ピチピチ(?)の二十歳←。で、爺様と二人暮らし。あ、違った。ツッチーも最近家族になったから二人と一匹暮らし。
うん。記憶喪失ではない。


じゃあ、なんでこんな真っ暗な…。


とりあえず、真っ暗な中で、手探りであたりを探ってみる。四つん這いになりながら、あたりを這ってみれば、いろいろと四角い箱がたくさんあった。それに、地面がちょっと土っぽい。
幸いなことにここは広くなかったようですぐに壁にたどり着けた。
触った感じ、たぶん木っぽい。出れないかと思ってがたがたとゆすっていると、ふいに少しだけ隙間があいた。


しかも、あいた場所は私の反対側。ゆすっていた振動で空いたみたいだけど、こっち側は普通の壁だったみたい…。開いて良かった…。


外に出てみれば、もう夕方。しかも、かなり見知った場所。私の家、貴船神社だ。


「なんだ、家じゃん…」


って、なんで私こんなところに…。


たしか、ツッチーがいないから探しに行って、あ、そうだ。高於さん!高於さんの神気が感じられなくて、邪気が集まっていって…。そう。トウコツが出てきたんだ。それで、爺様が逃がしてくれて…。あれ?爺様とトウコツは?あとあの時の人は?
一応助けてくれた、でいいんだよね?あれ?


「にしても、何が違うんだろう…」


とりあえず歩いてみることにした。どこからトウコツがまた出てくるかわからないから、ちゃんと札を持っておく。数えたけど、あと5枚しかない。5枚あるだけまし、か…。


「誰かー、いませんかー?これで、誰か出てきてもこわいんだけどさ…。爺さま―?いないのー?ツッチー」


小声だけど、そんなことをいいながら家の周りを歩き回った。やっぱり、誰もいないみたいで、なんだか独り取り残されたみたいだ。
それに、高於さんの神気も薄れてるし…。
いったいなんだっていうんだ。


「とりあえず…、風音にでも会いに行くか」


親友ともいえる風音に会えばきっとなんとかなる。ついでに彩輝にも会って相談にのってもらおう。爺様のことは…、今は考えないことにする。
わかってる。
ここにいないってことは、もしかしたら、もう…。
でも、それを考えてしまえばたぶん泣いてしまうから。


崩れたら、きっともう立ち上がれない。それが、怖い。


「って、何暗くなってるんだ私。とりあえず…、頑張れ!」


真っ暗な中、見上げてみれば、少しある雲に際立たされているかのように星がたくさん瞬いていた。それを見ていれば、少し勇気がわいてきた!


今は何時なのか。何もわからないけど、ここに人はいないということは確か。電灯なんてもともと無いここは真っ暗だ。でも、目が慣れてくれば割と見える。


鞄を一度地面に置き、中身の確認。


中にはお札が5枚。ちゃんと書いてある奴。何も書いてない紙が2枚。それは、私が即座に書くよう。持続力がないから、すぐに投げて相手に当てないとただの紙が貼りつくだけとなってしまうという、なんともわがままな…、私の力。
あとは、筆。小型の折りたたみナイフ。栓抜き。ノリ。折り紙、飴……、ろくなもん入ってないな。この鞄の中。


あ、携帯もあった。当り前だけど、ここは圏外。なんてったってここは山奥。こんなところに携帯用の電波なんてない。家にあるのは古い黒電話。


携帯の時間を見れば、今は十二時三十分。こんな時間に押し掛けるのは迷惑だとわかっているけど、しょうがない…。一応電波が繋がるところにいったら風音に電話してみよう。もしそれでい起きてくれなかったら朝までコンビニとかで過ごそう…。うん。そうしよう。


ガラクタ類を鞄の中にしまい、立ち上がる。携帯はポケットの中。よし。大丈夫。いける!


真っ暗な中を貴船神社から下へしたへと降りていく。ここの道は通いなれているものだから、真っ暗でも割と平気。体が大体の感覚を覚えている。
生ぬるい風が通り過ぎて行った。


上を見上げれば、うっそうと茂った木々。その木々の葉の間から少しだけ見える空にはやっぱりきれいな星が瞬いていた。


「ぎゃっ!」


上を見ながら歩いていたら、階段を踏み外してしまった…。


「いった…。尻打った…」


売った場所をさすりながら立ち上がる。お尻についた土をある程度払ってから再び歩き出す。今度はちゃんと前を見て、足元に注意しながら。


真っ暗な闇。本当に暗い…。もうここを通ることで大分慣れたけど、この暗さは街中では見れない光景だ。街中だったら、どんなに夜になっても、街頭や、家の中の明かり、車のライト、信号、その他もろもろの光が消えることがない。
そうなれば、夜は濃紺の色になる。
家の外見も見えるし、向こうから人が歩いてきても、ある程度なら見える。
でも、本当の闇はそんなもんじゃない。


本当の夜は、まったくもってそういった光がない夜は、濃紺なんて色はなく、まさに闇。黒。真黒。色をつけても、飲み込まれていきそうな、黒。


慣れてくれば、そんなこともなくなるんだけどね。


慣れない人にとってみれば、外を歩くのすら底辺だろう。
きっと、今の時代で大地震とかがおきて、電気が全部消えたら夜は大パニックだ。


そんなことをのんきに考えながらも手を前にやり、たえず周りを確認しながら進んでいった。


そして、下についてみて唖然…。


なんだこれ、なんだこれ、なんだこれ…。


いったい、京都はどうした?


目の前に広がっている光景を一言でいうと、見晴らしがいい。


まだ少し下に下がっていける場所で、私の視界には京都の街が見えてくるはずだった。ビルが立ち並び、車が走り、明かりの絶えない、そんな京都。


いや、たとえば京都じゃないにしても、こんな、あっちの方まで家々が見えるわけがない。そんなのあり得ない。
今の日本は、高いビルを並べ、だんだんと欧米化してきている。だから、車も走るし、街灯だってあるし…。


なのに、なぜ、明かりの一つも何もない?
ここは、いったいどこなんだ?私の知っている京都じゃない。でも、後ろを振り返れば、見たことのある貴船神社へと続く道のり。


ああ、じゃあ、ここはどこなんだ。


とりあえずそこに立っているわけにもいかなくて、そのまま歩き出す。


下にたどり着いてみれば、そこはいつかに見たことのあるような光景だった。土で造られた白い壁。コンクリートではない。それに、藁のようなもので造られている家。まるで、昔にタイムスリップしたかのような感覚に陥る。
アスファルトではない地面は土でできていて、水が溜まってしまわないように横の方に溝がある。


携帯を取り出してみれば、やっぱりまだ圏外だ。


とりあえずそれを鞄の中に入れ、あたりを歩き回る。


これじゃあ、まるで映画のセットの中みたいだ。時代劇の中の世界。
なんなんだ、これ。さっきから同じ疑問しか出てこない。


本当に、どうしたことだろう。
あの、やかましいぐらいの喧騒も、星を霞ませる明かりも、何もない。


何かのドッキリか?幻術?夢?そう、これは夢だ。絶対に夢だ。やけにリアルだけど、絶対に夢だ。
そう思いながら歩き出せば、さっき打ったお尻に痛みが走った。


「いたい…;」


しかも、ほほをつねるでもなく痛みを感じてしまった…。わかりたくないから、あえてほほをつねるなんて行為やらないようにしよう、と思ってたのに!なんでこんなところで…。


しかも、痛いってことは夢じゃないじゃない…。


「もう、なんだっていうんだ…」


くそう、なんか腹立ってきた。




こんでなんかいられるか!
(うおりゃあ!ふざけんなよ!原因わかったらそいつのことハッ倒してやるっ!)

((おい、あいつ、変なかっこしてるぞ!))
((しかも、唸り声あげてるぜ!))

(そこの雑鬼どもうるさいっ!)

((((ひいっ!!))))




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あきゅろす。
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