苦手派冷静派

「隼人、わかんないっ」


「さっきからそればっかじゃねーか;」


お昼ご飯も食べ終わり、宿題の総仕上げとなる大嫌いな化学にはいったあたしは、風に集中できないから部屋行きなさい、とリビングを追い出された。


そしてさっきから¨わかんない¨連発のあたしに根気強く教えてくれているのは、口は悪いのに何故か頭は物凄くいい隼人。優しさは不器用なのに教えるのは器用だし、よくわかんない。


だけど隼人がいてくれて助かったー。こんな我が儘も先輩の前じゃ絶対言えないし、一番自然体でいられるのは、隼人の前だけだから。


バシ────ッ


「ぼけっとしてんな」


「いたーっ!ただでさえ少ない脳細胞、死なせないでよ!」


「お前に、んなもんねーだろ。バカはそれ以上バカになんかなんねーよ」


「なっ!」


前言撤回!この口の悪さだけは目を瞑れません!大体なんだ!鼻で笑ってくれちゃって、あたしこれでも学校での成績は、中より上なんだから!


隣で教科書開いてる隼人を握り拳を作りながら睨むけど、当の本人は全く気がつかずに教科書に視線を落としたまま。その横顔は知的なんだけどね!何で口開くとああなっちゃうの!


「ここ、化学反応式が違ーから──」


「……」


「お前はまずこれ覚えねーと、解けるもんも解けなくなんだろ」


「う、うん…」


かと思ったら、ノートに分かり易く書き込まれる化学反応式やら、説明。あたし、いっつも隼人と喧嘩やってばっかだけど、可愛くないことばっか言ってるけど、こういう隼人って何か調子狂っちゃう。


そんなあたしの渦巻いた心を現すかのように小降りだった雨が勢いを増したようだ。風も強くなって、窓がガタガタと音を立ててる。やだなー、雷とか鳴ったら…。


「おい、空」

「───」


ゴロゴロ、ドカーン!
そんなことを考えながらボーッとしていたあたしは、隼人に呼ばれたことにも気づかずに窓の外を見つめていた、その時だった──。あたしの大嫌いな音が、大の苦手なアレが鳴ったのは。


「っ!?」


「なっ!てめー何いきなり抱きついてんだよ!」


¨ゴロゴロ──、¨
やだっ、いや!あたしは雷が鳴った瞬間、直ぐに隣にいた隼人にしがみついた。怖くて怖くて、この音だけはどうしても、何年経っても──。




***

「ん、ちょっと休憩しろよ」


「ありがとう」


分かんないだあーだこーだ言って煩かった空は獄寺に押しつけて自室で勉強してもらうことにして。驚異的な集中力を発揮した私は、粗方の宿題を片づけた。


そんな私に、ジュースを持ってきてくれたのは隣で宿題を手伝っていてくれた武。それに問題を解く手を止めて、時間を確認すれば、もう三時を回ってる。


「結構頑張ったんだ、私」


「よくそんな集中できるよな」


「武も今までつきあっててくれたわけだから、武も凄いんだよ」


「はは、(途中で寝てたなんて言えねぇなー;」


隣で苦笑してる武を一瞥してから窓の外に視線を向ける。朝から天気は悪かったけど、段々と雨雲が厚くなっていって、今にも雷がなってしまいそうな感じがする。


そうなると、大変なのは空なのよね。あの子の雷嫌い尋常じゃないし…、未だに克服できない弱みの一つだもんね。まあ獄寺が傍にいるはずだし、何とかなるかな。


「よしもう一頑張り!」


「もう少し休憩しねーの?」


「私はいい、もう十分だし。武疲れてるなら寝てていいよ」


「!んじゃ遠慮なく」


私は宿題を無理矢理手伝わせてしまった武を気遣ってかけた言葉のつもりだったんだけど、何を思ったのか私の膝に頭を乗せてごろん、と寝転がる武に一瞬思考が停止してしまった。


「武、何やってんの」


「寝ていーんだろ?」


「だからって何で私の膝?」


私がそう言っても、笑うだけで膝から頭を上げようとしない武に小さく溜息をこぼすと、やり残していた宿題に気持ちを再度向けなおす。一度、武に膝を借りた覚えもあるし、借りは返さなきゃならないからまあ、いいか。


ゴロゴロ──、ドカーン!
私がそう頭の中で自己解決して直ぐ、怪しかった天候は望みもしなかった¨雷¨という形で悪天候へと変わる。しかも、今ので停電してるし…。


今は夕方だからいいとして、夜になっても電気復活しなかったらどうしようかな。夕飯もお風呂も…、ああ、それより空って雷だめじゃない!




(さっきから何百面相してんだ?)
(停電になったんだけど……)
(ん?まあ直ぐに復旧するんじゃね?)
(だと、いいんだけどね)

─────
(ぎゃーっ何で停電?!)
(ちょ、おまっ!)
(もうやだやだっ!隼人助けてっ)
(ああ?!だからひっつくな//!)


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