俺達は、空の部屋を出た後、リビングで風が用意してくれた朝食を食べていた。 「そういえば、お前らの名前ってなんだ?」 「あれ?言ってなかったっけ?」 俺がそう問えば、髪の短い方の女が首をかしげた。いや、昨日は何かとバタバタしてたしな。 「そういえば、昨日、誰かさんのせいでバタバタしてたもんねー」 「ああ?」 もう一人のほうが言った言葉に、獄寺が彼女を睨む。それを受け流して笑う彼女に、獄寺は諦めたのか、そっぽを向いてしまった。 「じゃあ、自己紹介すればいい?えっと、私は風。春日風って言います」 髪の短い方の女がよろしくと言って少し頭をさげた。礼儀正しいんだな、こいつは。 「あたしは、空。伊集院空!気軽に呼んでいいよー」 「風と空な!知ってるみてぇだけど、俺は山本武で、こっちが―」 横で、そっぽを向いていた獄寺の方を見て自分で言えと目で促してみる。それに気づいた獄寺は睨んできたけどな…。 「獄寺隼人…」 「自己紹介ぐらい、ちゃんと人の目を見て言えばどう?」 「ああ?」 「ま、こっちも好きに呼ばせてもらうから、そっちも好きに呼んでいいよ」 睨んでいる獄寺を無視して俺の方を見た風はそう言うと、朝食の続きをとった。 そこに、2つの電信音が鳴り響いた。 「へ?」 「げっ…」 電子音の正体は2人の携帯だったらしく、ディスプレイを見た2人は正反対の反応をした。2人は同時に携帯を手に取り、立ち上がった。 「立ち聞きしないでね!」 「ちょっとごめん」 2人は電話を手に自分の部屋へとそれぞれ入って行っちまった。 2人が出て行ったあとを見送る。獄寺は相変わらずムスッとしてるけどな。まあ、いつものことなんだけどよ。 あの2人が携帯を触っていたのを見て、俺もほぼ無意識に携帯を取り出していた。画面を見てみると、アンテナは3本しっかり立っている。 「おい、獄寺。携帯のアンテナ立ってるぜ!お前も見てみろよ」 獄寺は、俺の言葉を聞くとポケットから携帯を取り出し画面を見た。すると、少しボタンを触ったかとおもうと、すぐに耳に当てた。 「おい、どこにかけてるんだ?」 「うっせえ、十代目のところだ」 「繋がるのか?」 俺が、聞いたとほぼ同時に獄寺の携帯から女の人のアナウンスが流れた。つながらなかったんだな。やっぱり、世界が違うと電波も届かないのか…。 「……くっそ!」 獄寺は酷く焦っているように見えた。そんなに焦ってもどうにもならないのにな。ツナのことが心配なんだろうけど、ツナなら強いし大丈夫なんじゃねえかとは思うけど。 「獄寺、何そんなに焦ってるんだ?」 「…別に誰も焦ってねぇよ」 「そんなに焦らなくても、ツナなら小僧もいるんだし、それに他の守護者も―」 「うっせえなっ!」 獄寺は俺の言葉を遮るように立ち上がると同時に怒鳴った。立ち上がった反動で椅子が床に倒れた。 獄寺が怒鳴ったことにより、俺も言葉を続けることをやめ、睨んでくる獄寺を見返す。こいつが焦ってるのは、右腕なのにそばにいられないからか? 「隼人!」 沈黙が包む中、突如扉が壊れんばかりに開き、空の大声が響いた。 その数秒後に、風の部屋の扉が静かに開き、風が出てきた。 |