痛みと鋭いと恥と

朝、起きて見ればお腹が痛い…。それも、半端なく。お腹の中を何かがえぐるような、違和感とともに…。これは…、もしかしたらアレかもしれない。


前は風と2人っきりだったから、とくに何も気にする必要なかったけど、今は男2人がいる。そんな中で、アレになってしまうなんて…。


「……っ」


とにかく、ベッドの上でうずくまっててもしょうがない。まだ寝ている隼人をそのままに、あたしはお腹を押さえながらトイレへと向かった。





「ハア、やっぱりアレだった」


はい。皆さんもお気づきのとおり、月に一度のアレですよアレ。


「って、誰に向かって話してんのよ、空」


「あ…、風。おはよ…」


「おはよう。で、大丈夫?」


「う、ん。無理。痛い…。薬、どこだっけ?」


「ちょっと待って、今探してくるから」


そう言ってリビングから出て行った風の姿を見送りながら、ソファーに横になる。なぜか、あたしは毎回、毎回痛くて動けなくなる。


動けるけど…。というか、風は全然平気みたいなんだよね。何さ、この差別!痛みも平等にしようよ!そしたら、あたしだけこんなに苦しむ必要なかったのにっ!


「空?薬の場所移動させたりした?」


「…うー、するわけないじゃん」


「だよね。じゃあ、もう無くなってるんだけど」


どうする?と聞いてきた風の言葉に驚愕した。薬がない!?まぢで!?ありえないんだけど!


「う、嘘!もっとちゃんと探してきて!絶対にあるって!」


そう言うと、風はもう一度リビングから出て行き、すぐに帰ってきた。手にはいろいろな薬が入っている箱とともに。


そして、その箱をあけて中身を調べ始めた。もちろんあたしにも見えるようにして。


「ね?無いでしょ?空が違う場所に置いてないなら、たぶんもう無くなったんだよ」


「そんなわけっ―――」


途中まで言いかけて、思いつくことが一つ。そういえば、前にコレになったときに、薬を取り出して…


「あれ?もう無くなってる…。あとで風に言って買っといてもらわなきゃ」


で、結局その日にそれが終わって、言うの忘れてたんだった。


「んー、私が使わないから、そこまで気にかけてなかったんだけど…今日、買ってくるか」


「うぅ…、ごめんね」


「いいよ」


「あ?お前ら何やってんだ?」


部屋からほぼ同時にでてきた2人は不思議なものをみるような目であたしをみた。隼人なんか、眉間のしわをさらに深くさせて訪ねてくる。そこは、聞かないでほしい。


「なんでもないよ」


「なんで空寝てるんだ?」


「……腹いた?」


「は?」


ちょ、風!そこまで言ったらばれちゃうから!一緒に住んでたら仕方ないかもしれないけど、でも、ばれたくない!


「お前、なんか変なもんでも食ったんじゃねえの?」


…バレてない。隼人ってそういうこと鈍そうだもんね。ある意味、よかった…でも、


「変なものなんか食べてないよ!」


それだけは、聞き捨てならないから!


「お、朝から元気だな」


「武。おはよう」


「おはよう。風」


なんか、この2人、いつの間にか名前で呼び合うようになってるんだよね。何があったんだろ?


「で?空はどっか悪いのか?」


「いや、そう言う訳じゃ…」


「ま、察してあげてよ。2人とも」


「ああ、なるほど」


「え、武、わかったの?」


「?おう」


なんで、たけちゃんはわかるの?風もわからないだろうと思って言ったみたいだし…。というか、こういうときにこそ天然発揮してよたけちゃん!


というか、なんでたけちゃんはわかって隼人はわからないの?隼人のほうが頭いいんじゃんなかったっけ…。


「じゃあ、朝ごはん食べたら薬買ってくるから。それまでは我慢して?」


「…うん」


「薬がいるほどひでえのかよ」


「隼人にはこの痛みはわからないんだよっ」


「あー、じゃあ、今日は無理か」


「ん?武なんかあったの?」


「いや、今日バッティングセンターにいけねえかなあって思ったんだけど、まあ、また今度でもいいしな」


「いーよ。行ってきなよ…」


「でも、空」


「帰りに買ってきてくれればいいから…」


安心させようと笑ってみようとしたが、それと同時に痛みが走って表情を歪めるだけに終わってしまった。


その様子を見ながら何かを考え込んでいる風。そして、さまよわせた視点がある一点で止まると、顔を輝かせた。


「あっ!いるじゃん。もう一人。暇な人が!」


そう言って、風はニヒルな笑みを浮かべてある人物へと視線を向けた視線の先にいた人物は…


「はあ?俺?」


「ね?買ってきてくれない?薬局に行くだけでいいし」


「…ああ、別に、いいけど、よ」


「よし!じゃあ、決定!武、よかったね。心優しい獄寺に感謝しなよ?」


「お、おう…」


「って、ちょ、ちょっと待って!」


隼人、も何安請け合いしてるの!?というか、隼人はあたしが何で苦しんでいるか知らないでしょ!?


しかし、あたしの静止の声も聞かずに風は話を進めていく。


「よし!じゃあ、紙に買ってもらうもの書いて渡すから、食べたら行ってきてね」


「ああ、わかった」


風、絶対にわざとでしょ!隼人、ただの腹痛だと思ってるから!内心焦るあたしをよそに、風はまだニヒルに微笑んでいて、隼人は何も気づいてない。


あーもう!お腹痛いし、隼人は馬鹿だし!もう、どうにでもなれっ!!


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あきゅろす。
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