君を色に例えて

「あっちー」


「あっちー隼人くん、今日の水撒きは君だよ」


「……手伝え」


「えー…、アイス奢ってくれるなら」


「チッ、…仕方ねぇな、おら行くぞ」


「ラジャー!」


クーラーをつけても、煽いでもちっとも涼しくない。それなのに元気に庭に飛び出していく空と獄寺を横目に溜息をつく。どうやったらあんなに元気にここより暑い外に出られるのか、不思議も不思議、七不思議に値するわよ。



「空も獄寺も元気だよなー」


「んー…」


「その点、風だらけ過ぎじゃね?」


「武だって涼んでるでしょっ」


ソファーに横になりながら、クーラーの風が直に当たる場所にいる私は、ベランダに出て、麦茶を飲んでる武と言いあいっこ。


ま、空とか獄寺みたいなあんな長い言い合いにはならないんだけどね。だって私たち、考えが大人だから。ちゃんと引くこと知ってるし?


「なあ、」


「なにー?」


「水遊びになってんぜ、あいつ等」


「──…はあ、びしょ濡れだったら絶対家に入れないわよ」


「はは、んじゃもう無理だな」


武のその言葉に冗談でしょ、と思いながら上体を起こして、武に並んでベランダに出て中庭を見下ろすと、何とも近所迷惑なことしてる二人を発見。


「あーあー、知らないんだからねー私…」


「でも綺麗じゃね?虹出来てる」


「ほんとだ…」


武が指さす方向にホースから上に向って放水される水が綺麗な虹を作っている。2人はそんなことお構いなしに水遊び状態になっているけど、上から眺める私たちは何だか得した気分。


「虹ってさ、何で七色なんだろうね」


「そりゃ、…」


「化学的に説明するんじゃなくてさ、こう、なんていうか…」


「何か難しいこと考えんな、風」


真面目に聞いてるの?と言おうと顔を上げると、武はその出来た虹を真っ直ぐに見つめて、なんだか懐かしそうに目を細めていた。


だからその問いかけは喉につっかえて、言葉にならなかったの。虹は七色。私たち四人を虹になぞらえたら、どうなるのかな。


「ねぇ、武」


「ん?」


「私って何色かな?」


「──また、何だよ急に」


「いいから、いいから」


自分の色って自分じゃ分からない。だって端から見る私と、自分から見る私は全くの別人になっちゃうから。


案外こういうのは出逢ったばかりの人とかに聞いた方が正確だと思う。まあ、あれだ。第一印象みたいな奴。


「──…白じゃね?」


「白かー……」


「ついでに言えば、獄寺は赤、空はピンクだな」


「ああ、何か分かるかも」


下で未だに水遊びしてる2人を見ながら、武が言う色に当てはまるなーなんて思いながら、自分の色に少し疑問を抱いた。


「何で白─?」


「何にも染まらない、…けど支えがなきゃ崩れ落ちそうな不安定感。まあ、まだよくわかんねぇんだけどな」


「!──」


爽やかに笑っているけど、私をとらえたその鋭い、何でも見透かされてしまいそうな瞳に、心臓が大きく脈打った。…軽く図星なような気がしたから。


「なあ、風」


「なに?」


「俺は?色に例えたら」


「青」


「即答かよ」


隣で苦笑する武に、私も自分で即答したことに驚いた。まあ、リボーン読んでたわけだし、守護者の炎に当てはめてるっていうのもある。だけど実際、今傍にいる彼を色に例えるならば、感覚的に青だ。


「武って、海みたいだから…」


「海?」


「うん、青くて、澄んでて、広い海」


仲間思いで、心が広くて、たくさんの人からの信頼と期待にちゃんと応えられる人だから。…だから、私はこんな真面目な話をしてたら寄りかかってしまいそうで怖い。


ベランダから手を伸ばして、晴れ渡る青空に掲げてみる。うん、やっぱり武は大空より海だ。


「夏休み中に行けたらいいね、海」


「ああ、…気晴らしにな」


「!──、ははっ、うん、じゃ二人を呼び戻しにいこっか」


「おう!」


未だに水族館の私が言った言葉を覚えてたなんて吃驚だ。ニカッと笑ってくれた武に私も微笑み返して、二人の元へと向かう。




(暑い……)
(玄関で何言ってんだよ、)
(だって外もっと暑いし…)
(今からそんなんじゃ海行けねーじゃん)
(それとこれは別なのっ)


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あきゅろす。
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