恐怖の鬼ごっこ

先輩から不審な目で見られつつも、ほとんど無理やり出てきてしまいすこし不満を覚える、でも風になるべくはやく来いと言われたからデパートに来た。


たぶん、メンズ服売り場だろうから、3階へ向かう。エスカレーターに乗りながらゆっくりと流れに乗って上っていけば、3階へ着いた。


そこでは、女子がかなりいて、一瞬ここメンズ服売り場だよねと確認してしまう。


周りを見渡せば、たけちゃんと話している風を発見!


「あ、いたいた!風!」


声をかければ、眼を輝かせてこっちを見た風。でも、あたしはそこから動けなくなった。女子が…女の子たちの視線が!


「げっ…」


声をかけなければよかったと激しく後悔したのは言うまでもない。やばい、やばい、やばい!視線がかなり痛い!こんなことなら、もっと先輩といた方がよかった!


ここは…、


「お、お兄ちゃん!探したよ!早く帰ろう!ね!?」


「はあ?お兄ちゃんって、痛っ!何すんだテメー!」


あたしは、隼人に近づきその手を取ってこの女子の群れから引き出そうとする。


なのに、この馬鹿!合わせてよと思って、反論しようとする隼人の足を思いっきり踏みつけてやった。


風はあたしのやろうといていることが分かったのか、あっちでも同じことをやっている。


まあ、たけちゃんはわからなくても笑ってるだけだからなんとかなってるみたい。


「ちょっと、合わせてよね!先輩とあまりしゃべれなかった上に、こんな痛い視線浴びるのは嫌だから!」


隼人にしか聞こえないように小声で言うが、そんなのも気にせず隼人は普通の声で答えてくる。空気読んで!お願いだから!


「はあ?先輩は俺に関係ねえだろ!」


「うっさいな!ほら、お兄ちゃん!行くよ!」


わざと、お兄ちゃんの部分を強調させて、周りで茫然とあたしたちを傍観している女の子たちの間を通っていく。


後ろでもたけちゃんの腕を引っ張って抜け出した風を確認できた。と、それと同時に後ろで我に返った女の子たちも動き出した!


「やば!走って!早く!」


「お、追いかけっこか?」


「そんなこと言ってる場合じゃな―い!」


これじゃあ、エスカレーターだったらすぐに追いつかれちゃう!


前方に天の助けというか、タイミングよくエレベーターのドアが開くのが見えた。


「エレベーターに行こう!」


風がたけちゃんと走りながら前方に見えるエレベーターを指差した。


後ろからは奇声を発しながら追いかけてくる女性たち。怖い、怖い、怖い!


どんどん近づくエレベーターの中にいた人たちが降りて、ドアが閉まろうとするところに滑り込み、風とたけちゃんが入ったところでドアが閉まった。


ドアの隙間から悔しそうにこっちに走ってくる女性たち。


「ハハハ、楽しかったな!」


「楽しかったじゃないよ…。私、囲まれても逃げろって言ったよね。なんで…こんな…」


未だに、笑っているたけちゃんの前で風はうなだれている。


「だいたい、獄寺も獄寺よ!あんたがダイナマイト出そうとしなかったらもっとうまくできたかもしれないのに」


「え、隼人ダイナマイト出したの!?」


「うっせえ!うざかったんだからしょうがねえだろ!つーか、出してねぇよ!」


「うっわ、信じらんない。物壊したら払うのあたしの家なんだからね」


「ハハ、まあ買えたんだしよかったじゃねえか。それに、鬼ごっこも楽しかったしな!」


「たけちゃんの天然って健在なんだ…」


たけちゃんは笑っているけど、あたしたちにとっては笑えることじゃなかったんだよね。


「で、もう買うものないよね?」


「あ、獄寺なんか買いたいって言ってなかったか?」


「あ?ああ、煙草…」


「あたしの家、禁煙だよ」


「は!?」


「お、この機会に禁煙すればいいじゃねえか!な!風!」


「へ?あ、うん?」


風明らかに聞いてなかったでしょ。適当に相づち打ってるのバレバレだから!


エレベーターで下につき、あたしたちはこの話を一旦切り上げてそーっと外に出て見た。幸いまだ女性の大群はなくて、ほっと胸をなでおろす。


「よし、居ないみたいだね。とにかく、いったん帰ろう!ね!」


このまま煙草の話を忘れてくれれば…


「帰り、絶対に煙草買うからな」


「…わかった。でも、絶対に家の中では吸わないでよね」


って、買うのあたしじゃんか!買ってもらう側の態度じゃないでしょ!とか思ったけど、それを言ったらまたいろいろと言い争いになりそうだからそこは抑えた。


「あ!いた!」


「「「げっ!」」」


甲高い声に振り向けばエスカレーターから下りてくる女性の軍団。何でそんなに追いかけるかな!?


見事に重なった声はたけちゃん以外のもので心底嫌そうな声。たけちゃんはというと、やっぱり楽しそうに笑っている。


「と、とにかく逃げろ!」


掛け声とともに、お、また鬼ごっこか?というたけちゃんの笑い声が聞こえた。さすが天然。


あたしたちは、店の人の迷惑も考えずに疾走して外に出た。


無事に振り切ったあたしたちは隼人の煙草を買ってなんとか家に帰りました。もう、買い物はしばらく行きたくないな…。あー、先輩に会いたい!



(あ、これ…)
(何?新聞?…あ)
(ん?なんだ?…お!)
(ああ?なんなんだ…。って)

((((デパートのことが記事に載ってる…))))


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あきゅろす。
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