「よし。じゃあ適当に5人組作れ。あとは、バスケ部!たのんだぞ」 刈谷先生はそういうと、舞台の上に座って傍観者の如く腕を組んだ。俺は、ダチに誘われて、5人組を作る。獄寺の方を見れば、珍しく匠と一緒の組になっていた。あの二人って仲良かったっけか?そう思いながらも、入口側へと視線を移す。 今は、今度ある球技大会の練習ということで、体育の時間をつかってバスケをすることになっていた。この学校の体育館にはコートが4つあって、半分から舞台側を男子が。入口側を女子が使っている。 風と空もあっちにいるんだろうけど、今は先生の話しを聞いてるのか、見つけることはできないな。 「じゃあ、あとはバスケ部!頼んだぞ」 刈谷先生は全てをバスケ部に預けた。あの先生って、いつも、いいかげんじゃね? 「じゃあ、こっちのコートは…―――」 バスケ部の奴に呼ばれて、コートへと入る。そして、ボールとホイッスルを持ったバスケ部の合図でバスケが始まった。 久しぶりのバスケは、本当に楽しくて、どんどん試合は動いていく。試合がないときに、獄寺のチームのを見ていたら、匠と獄寺が何か言いあいをしながらも、勝ち進んでいた。どうやら、今日はリーグ戦見たいで、このまま俺のチームも勝ち進んで言ったら最後に獄寺のところと当たるかもしれないらしいって、さっき聞いた。 女子の方に視線を向けたら、ちょうど2面あるこっち側のコートで風と空を見つけた。 「へえ、頑張ってるのな」 「ん?ああ、委員長と副委員長?お前あいつらと仲いいよな」 「ハハハ、まあな」 笑ってそう答えたら、言ってきたこいつは溜息をついて他の奴のところにいっちまった。なんだったんだ? にしても、風はよく動くのな。あ、空にパス渡った。お、空が風にパスを渡してそのままゴール。すげえのな。息ぴったり。 「おーい、武。ぼーっとしてないで、次もう試合だぞ!しかも、匠だ。匠!」 「お、もうか?ハハハ、楽しめそうだな!」 「笑ってんなよな。あいつら強いぞ。見てなかったのか?」 「ああ、女子の方見てた」 「ふーん?あ、ほら、呼ばれてる。獄寺は任せたぞ。武」 「ハハハ!おう!」 どうやら、いつのまにか決勝戦みたいで、一試合分休めたおかげで汗も大分引いたし身体も休めたしな。コートに入れば、キャー!という声が聞こえてそっちを向いた。試合がない女子がこっちのコート脇にきて、騒いでいた。 「山本クーン!頑張ってねー!!」 「ハハハ!ありがとな!」 答えてみれば、またキャー!と歓声が上がる。ハハハ。おもしれえのな。その中に風と空の姿がなくて、少し視線をさまよわせたら、その集団より少し後ろで二人一緒に立ってこっちを見ていた。風が手を振ってきたから、降り返せば、集団から再びキャ〜!という歓声が上がった。 「ぎゃーぎゃー、うっせえ…」 「ハハハ。まあ、いつものことじゃねえか」 第一、俺だけじゃなくて、獄寺だって言われてるしな。まあ、獄寺は応えてなんてないんだけどな。 「おい、山本。この勝負、俺達が勝つぜ?」 「お?宣戦布告か?受けて立つぜ?」 「武には負けねえよ」 匠が獄寺のよこにきて、俺を指差してそういった。なんだ。こいつら結託してんのか?おもしろくなりそうだな…。 試合が始まり、ジャンプボールは獄寺のチームがとった。そして、一気に速攻で責められてすぐに点が入れられてしまう。珍しく、獄寺がそいつのことほめてたから、よっぽど勝ちたいのな。まあ、オレも負ける気はねえけどな! 俺のチームからのボールを受け取って、こっちも速攻で攻め返す。女子の悲鳴みたいなのが聞こえたけど、そんなの気にせずに、そのままレイアップを決めた。お、上手く入ったな。 「チッ」 獄寺に思いっきり舌打ちされたけど、チームのやつらは肩を叩いてくれたりした。やられたからには、やり返さねえとな。 そんな感じで、俺たちは 接戦を繰り広げた。キャーキャー言っている女子に、獄寺がキレそうになったり、匠に抜かれてしまったり、俺が3ポイント入れたり。 そうこうしているうちに、時間が来て、笛が鳴った。 得点を見てみると、35−35。 「チッ、引き分けかよ」 「あ〜、くそっ!最後に俺が入れてれば!」 「ハハハ!まあ、楽しかったしいいじゃねえか!な?球技大会じゃ、俺達味方なんだし」 「敵を倒すにはまずは味方からっていうだろ?」 匠はそう言って、悔しそうに呻いた。というかそれって、敵をだますにはまずは味方から、じゃねえのか?味方倒してどうするんだ? 「アホか。味方を倒してどうするんだよ!」 「まあ、まあ」 「おい!野球バカ!次は絶対に俺が勝つからな!」 「ハハハ!俺だって負けねえぜ?」 試合が全て終わって、先生の周りに集められる。先生はいつのまにか刈谷先生じゃ無くて、もう一人の先生だった。どこいったんだ?刈谷先生。この先生は話しが長くて、聞いてたらだんだん眠くなってくるんだよなー。 「えー、だから、ファールはしないように。あぶないですからね。そして…―――」 隣の獄寺を見たら、まったく明後日の方向を向いていて、こいつも聞いてないなと思った。女子の方でバスケをしている音がなくなったから、そっちを見てみれば、皆休憩をしていた。風と空は、ゴール下に座って二人で休憩していた。 二人とも、頑張ってたからなー。そんなことを思っていると、何か違和感を感じた。頭上にあるゴールが前のめりに倒れてきているように見える。いや、見えるじゃねえな。 「おい、獄寺。あれ、」 「ああ?なんだ、空たちじゃねえかよ。だから、なんだ」 俺が指差した方をみた、獄寺は怪訝そうに眉をしかめた。 「だから、あのゴールだよ。なんか…、あぶなくねえか?」 若干ではあるものの、確かにそれは前に垂れ下がっている。先生の話しなんてもう聞いていなかった。 「おい、そこ二人、聞いてるのか?おい!」 そのとき、カコン、という音とともに、そのゴールを支えている鉄パイプから何かがはじき出された。 ゆっくりとかしいでいくゴール。二人は話しに夢中なのか気付かない。他の奴らも気づかない。 俺と獄寺は立ち上がった。先生が怒鳴っていて、その声で、二人はこっちを見た。でも、そのときには、俺と獄寺はもう走り出していた。 「風っ!」 驚いたようにこちらを見ている二人に駆け寄ろうとしたときに、体育館に鈍い音が響き渡った。 そして、ゴールが堕ちる音が当たりを支配した。 |