38:I'll sail with you

ヴァリアーに戻って、洋服を着替えてから、帰ってきたことを告げるために結は談話室に向かっていた。


ベルに言われたことも気になっていた。


結はリイナになっていたときの記憶は意外とはっきりとのこっていた。といってもどうも自分が行動している風ではなく第三者視点のような気分だった。


だからこそ、ベルの言った意味が気になった。とても不機嫌なようだった。あんな態度とられたことなかったのだ。もちろん機嫌が悪いときとかはあったけど、そういうときは極力近づかないようにしてくれているらしかった。


談話室の前に来て、一度深呼吸をする。
それから、勢いよく扉を開いた。


そこには幹部全員がそろっていた。入ってきた結をみて全員が固まる。


「……う゛お゛おぉい!なんでここにいやがるんだあ?」


「…スクアーロ」


「!お前…、思い出したのかあ?」


椅子に座り、刀の手入れをしていたスクアーロが目を見開いた。その言葉に頷いて返すと、幹部のベル以外がたちあがった。


「本当に思い出したの?結ちゃん」


「うん。ルッス姐。ちゃんと思い出したよ」


ルッスーリアはゆっくり近づいてくると、結をぎゅっと抱きしめた。


「ばかっ!心配したのよお!」


「うん。ごめんね。ありがとう」


ルッスーリアをなだめるように、彼の背に腕を回す。かたい筋肉がちょっと痛かったりしたけど、それは言わなかった。


「結、ミーも心配しましたー。なのでー、こんど何かいっこ言うこときいてくださいーい」


「フラン。うん。私にできることなら」


「おかえりなさい。結」


「!ただいま」


頭をポンポンと撫でてきたフランに、笑みを返す。


「う゛お゛おぉい!!よかったじゃねえかあ!一時はどうなるかとおもったぞお!」


「うん。心配かけてごめんね。ちゃんと全部思い出したから」


「ああ、これで気色悪いのから解放されるぜえ」


「え?」


心底ほっとしたような言葉に、首をかしげる。未だに抱きついていたルッスーリアはお祝いよー!と言って厨房へと駆け込んでいってしまった。


「ボスが、スク先輩を見てもグラスを投げなかったんですよー。それどころか、相手にもしなかったんですよー」


「ザンザスが?」


「それで、気持ち悪いって言ってるんだから、とんだМですよねー」


「う゛お゛おぉい!それは聞き捨てならねえぞお!俺はМじゃねえ!」


怒鳴り声をあげるスクアーロと、フランの毒舌の応酬につい笑みを漏らすと、二人はピタッと争いをやめた。


「ああ、やっぱ、結はその方がいいぜえ」


「確かに。あの人の笑い方は結には似合いませんよねー」


二人は自分の中で完結させてしまったらしく、それぞれうんうんとうなずいている。


そこで、いつもだったらとっくに話しているであろう人物と話していないのに気付き、その姿を探した。
彼はソファーに座っていた。


二人の横を通り過ぎ、その人、もといベルのもとに向かう。近づいても顔をあげないから、横に座った。


「ベル。全部、思い出したよ」


「………あっそ」


「心配かけてごめんね」


「別に心配してねえし」


そっけなく返すベル。顔をこちらにむけてくれないから、思わずベルの顔を覗き込んだ。


「ベル」


ベルは数秒固まっていたかと思うと、すぐに顔をそらしてしまった。


「……もう愛想つかしちゃった?」


苦笑しながらそう聞くと、別にと帰ってくる。相変わらずそっけないけど。


「あーっ!もう!つーか、こんなん王子らしくねえし。あと、愛想つかすのは俺じゃ無くてボスだから」


「ふふ、そっか」


頭をわしゃわしゃとかくベル。あと、ベルが愛想を尽かすわけじゃなかったらしい。ならよかったと思って笑ったら、頭にベルの手が乗った。


「…次こんなんあったら、俺が殺してやるよ」


「えー、殺されるのは勘弁してほしいかも」


「大丈夫だって。俺が痛み感じないようにしてやるから」


「ふふ、でも大丈夫だよ。ザンザスがもうそんなことにならないって言ってたから」


「チッ、なんだよそれ」


拗ねたように唇を尖らせるベルにふふ、と笑っていたら、目の前に人がたったのがわかって見上げた。すると、すとんと何かが目の前に膝まづく。見ればそれはレヴィだった。突然のことで驚いていると、いきなり手をとられた。


「御無事でよかったです!お帰りを心よりお待ちしていましたっ!」


真剣なまなざしなのはわかるんだけど、なにぶん濃い顔なのだ。それが結構まじかにあって、なおかつ手を握られている。しかも今まであまり話したことがなかったからよけいに戸惑っていると、隣でベルがすらっとナイフを抜くのがわかった。


あ、止めないととか思った瞬間、それより早くにいきなり談話室の扉が壊されそうな勢いで開く。


「あ、ザンザス」


扉を蹴ってあけたのはザンザスだったようで、ずかずかと入ってきた彼は、結たちの状態を見て、眉を寄せた。未だに、レヴィは結の手を握っていたのだ。


「ぼ、ボス!これはちがっ!」


「ボス!変態が結に手出そうとしてたー」


「え、ちょ、ベル!」


「貴様っ!適当なことをぬか―――」


慌ててベルのほうをみるとしてやったりと笑っている。ソレを見て、レヴィは逆上するが、その言葉をザンザスが途中で遮った。


「…カッ消す」


その言葉があいずとなり談話室は戦場と化してしまった。すぐにレヴィのもとから離され、ザンザスの腕のなかに閉じ込められる。
ザンザスも銃をぶっ放しているんだけど、それ以上にベルとレヴィの戦いになっているっぽかった。


そして、ザンザスはそのまま私を抱え談話室を出た。もちろんそのあとは、部屋に連れて行かれ、たっぷりお仕置きと言う名の甘い時間を過ごしたのだった。




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あきゅろす。
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