それは、突然だった。 突然、結は、彼女の「いなければいけない世界」からはじき出され、「いてはいけない世界」または、「いるはずのない世界」に連れてこられた。 それは、偶然が偶然に重なりおこった、神の意志ではない場所での出来事なのかもしれない。 それとも、偶然などではなく起こるべくして起こった神の意志によるものだったのかもしれない。 そんな真意も、理由も、意味も何も結にはわからなかった。 ただ、一つ。わかることは―――… 「ここ、どこ?」 結が、 「なんで?」 結のことを誰も知らない 「なんで…」 そんな世界に 「なんで…、窓の外が外国なの?」 来てしまったということ…。 そして、もうひとつ。理解したことがあった。 「誰か、いるのか?」 背後にあった扉が男の人の声とともにゆっくりと開く。結は、それをただ呆然と突っ立って見ている。動けなかった。隠れることも、何もしない。何も考えられなかった。 ―――理解したことがある。 入ってきた人は、結の姿を見たとたん、いきなり駆け寄り抱きしめてきた。 それは…、 「リイナ!!」 結が想像もしていなかったような出来事がこれから、いや、現在進行形で起こり始めているということ――― 包まれる体。結よりも大分背の高い男の人は、結じゃない名前を呼んで彼女を力いっぱい抱きしめた。何が何なのか、この男の人は誰なのか、なんで抱きしめられているのか、何もわからずに結はただ、硬直していた。 「よかった!やっぱり、帰ってきてくれたんだね!!」 |