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理念にキスはできない(ロロ)

仮面の下には兄がいる。
ロロにとっては既にそれが当然の前提だったので、ナイトオブスリーの言葉の意味を理解するまでに、少し時間が掛かってしまった。

男の推測は、ある面においては的確と言えた。
空虚どころか、ついこの間まで『ゼロ』は監視対象で餌だった。
空虚と餌とではどちらが非情だろう。おそらくは前者の方が幾分かましであるに違いない。

廃嫡された皇子であると知りながら、ルルーシュ・ランペルージを餌として扱うことに機情の人間達は何の疑問も持たなかった。
つまりは、そういう国なのだ。いかに過去、権威の中心にいようと弱者に成り下がった者に権利など存在しない。誰も関心を払わない。

奪われ続けた人間であることなど誰よりもロロが知っている。目の前の男がそう言及する根拠は勘だが、ロロは任務としてそれを体現する組織の一部だった。大した差だ。

(そう、記憶も唯一の肉親も尊厳も、何もかも奪われた筈だった。そうまで奪い尽くして、尚あんなにも深い愛情が残されていたなんて、誰が予想しえただろう。)

「…『兄さん』、」

馴染んだ名を舌に乗せる。祈るような気分でロロは目を閉じた。


ルルーシュ・ランペルージが概念だけの空虚な存在なら、ロロはとっくに任務を遂行していた。
ただ、与えられた本物の愛情だけが暗殺者の手元を狂わせた。


空虚の一言で片付けるには、彼はあまりに人間だった。手のひらも腕も向けてくる眼差しも、あまりに温かすぎたのだ。

(終)



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