[通常モード] [URL送信]

烈々布店長の過去拍手置場
若返りの兎/阿伏兎
━━━
━━


『新しく配属された方ですか?私はキッチン担当のですね…』


「いや、俺だから…俺だよ俺…」


『……オレオレって、何か 昨今の良くない響きなんですけど』


「阿伏兎だっての」


長身で目元の涼しい彼はどう見ても20代前半で。
髪や目の色は確かに阿伏兎さんを彷彿させるが…
眠たげな気だるそうな目付きも、そう言われれば…という程度で 若々しい張りがある


『…んー…いくらなんでも副団長さんの名前を語るのはマズイんじゃないですか?』


阿伏兎「あのな……言っとくがいつもの馬鹿団長のイタズラだからな……」


『……団長……また 変な薬でも盛られたって言うんですか?』


阿伏兎「あー…声はそんな変わらねぇだろ?」


『…………ハッ!!!!!!』


阿伏兎「やっと解ってくれた?」


そうだ

声は変わってない

低い いつもの阿伏兎さんの声
カッコいい声
大好きな声

じゃ ホントに…??目の前のイケメンさんは……


『阿伏兎さん、若返っちゃったんですか?』


阿伏兎「あー…10年とそこいらか…ったくあの馬鹿は…」ぶつぶつ


『阿伏兎さんの…若い…』


阿伏兎「あ?どした 嬢ちゃん」


『あ あぶぶ 阿伏…兎さんの…若若若あ…アブ…』ばたーん


阿伏兎「はぁ!?ちょ、ちょっ…嬢ちゃん!?どした!?おい…」


なんという事でしょう

目の前のイケメンさんが阿伏兎さんだと認識するやいなや 私のときめきモーターが火を吹いて失神してしまったのです


神威「あーっはっは!それでその子 気を失っちゃったの?」


阿伏兎「団長……ホンット悪趣味だな」


神威「あーっはっはははは」


阿伏兎「笑い事じゃねぇよ…早く解毒剤寄越せよ」


神威「別に若返ったままでいーじゃん。何がダメなのさ」


阿伏兎「コックが倒れちまったんだぞ…気まずいわ。
大方この薬もどっかのパーティーグッズだろ…時間差で効果が無くなるんじゃねぇのか?」


神威「なんだ。解ってんじゃん。つまんないなぁ…
まぁ あと効果は数時間だから楽しみなよ」


阿伏兎「楽しくねぇよ!」


━━━
━━



『ん…』ぱち


阿伏兎「おー 目が覚めたかい、お嬢ちゃん」


『ぴゃ!!ああああ阿伏兎…さん!!』


阿伏兎「ンだよ…まだ慣れねぇのかよ…」


『あっ すすすすすみません!あっああああ阿伏兎さささ…』


阿伏兎「ったく おかしな奴だな…熱は」


『ぴゃ!!』ビククン


そう言っておでこをコツンと付けて来た。
こんなに近くでイケメン阿伏兎さんが…これは刺激が強過ぎるぅぅぅ!!!!



阿伏兎「無いみてぇだよなぁ…」


『あああああぶあぶぶとさん…ファンサし過ぎですよぅ…』


阿伏兎「は??ファンサ?なんだそりゃ」


『あ、あぶアブ阿伏兎しゃ』


阿伏兎「……悪いモンでも食ったのか?……医務室 行くか?」スッ


『ぴゃっはぁぁぁぁぁおひっお姫さ…おひ!!』


お姫さま抱っこで抱え上げられた私はもう一向に上手く喋れない


阿伏兎「……本格的に変だな…医務室まで運んでやるから…」


『ちちちち違うんです!あああ阿伏兎さんが!!カッコいいから!!わたわたわた私、戸惑っちゃッッて!!』


阿伏兎「カッコい…ん……ああ、団長のイタズラ、まだ直んねぇんだよ…我慢してくれよ」


済まなそうに、しかしどこか面倒くさそうに彼は言う
またその横顔がイケメンでイケメンで…
駄目だ、耐えられない
絶えそうなの息のの根です


『あ、あの 私 いつもの阿伏兎さんが好きなんでふ』


阿伏兎「……ん?……」


『いつもの阿伏兎さんも只でさえカッコ良くてイケオジなのに、更に一般ウケするイケメン感まで増してしまって…らめですよぅ』


阿伏兎「えっと……それは、褒めてくれてンの…??それとも、誘ってン…」


『違うます…ただの事実でふ』


阿伏兎「……」


『あ またイケメンモーターが振り切れて…』ぱた


阿伏兎「んなっ?おーい!?お嬢ちゃん?おーい!!」


━━━
━━



『ん…あ…??』


阿伏兎「おー…起きたか?」


目が覚めた私の前にいたのは いつもの精悍でくたびれた、涼しい目元に馴染みを讃えた あの阿伏兎さんが居た


『あっ!!あぶ、あ…』


阿伏兎「あー…戻っちまった」


『阿伏兎さん!!』がばっ


阿伏兎「!!?」


夢中で抱き着いてしまった
それは本当に、いつもの阿伏兎さんだった
肩幅も 雰囲気も 匂いも


『あー……いつもの……阿伏兎しゃん……だぁ』


阿伏兎「……物好きなお嬢ちゃんだねぇ……こんな熱烈に歓迎されたんじゃ、なあ……参った参った…」


困ったように、幼子をあやすように、私の背中をトントンしてくれる


阿伏兎「若返り損ねちまったじゃねぇか」


『阿伏兎さんは…そのままでいて下さい……それ以上カッコ良くなんないでいいですぅ……』


阿伏兎「……っっ……参ったな……褒め殺しかよ…」


もう、何を口走っているのかも よく分からなくなってしまった私を 相変わらずトントンと宥めながら きっと彼は[どうしよう]って、途方に暮れていたに違い無い

私は もうそんな事にも気が回らずに その温もりに甘えていた


end



[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!