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☆クラシカ口イドの小説(長編)
ラッパーと贈り物
冬が近付いて来た

木枯らしの気配を引き連れて落ち葉がカサカサと風に揺られてリズムを刻む、
そんな今日のお使いのメモは少し かさ張る物が多いので 私はシューさんに声を掛けた


シュー「はい、喜んで」


紳士的に笑顔で応えてくれた
彼は 本日ラッパーだった

普段のシューさんとはかなり装いが異なるので、ちょっとだけ 別の人と歩いている気分だった


シュー「今日は少し風が冷たいですね」


『ねー、もう秋ですもんね』


シュー「今日はお鍋でしたっけ」


『ええ、お豆腐沢山買いましたよー』


シュー「温まりますねー」


服装は違えど 当然 口を開けば、会話等 いつものシューさんだ


シュー「おっと、風…」


『さむっ』ぷるっ


シュー「…… 忍路殿、手」


『へ?何?』


シュー「手ェ、貸して下さい」


『こ、こうですか?』


言われて 差し出した私の手を おもむろにシューさんは掴んで、彼の手と繋いだままにそのポケットの中に引き込んでしまった


『えっ』


シュー「 忍路殿 冷たい…風邪、引かないで下さいよ」


『あ、は、はい…』


こんな風に ラッパーシューさんは暫し強引にコミュニケーションしてくれる

たじろいで耳の色味まで変わってしまう私に 気付いているのかいないのか…

多分気付いてないよね…
私の気持ちなんて
あー…ドキドキする


彼のポケットの中で 繋がった手と手が熱い


シュー「……… 忍路 殿…」


「はーい、そこの仲良しカップルさん!!商店街の福引き、今日までだよ!!やってかない?」


『え?あ、福引き…そーいえば、さっき買い物したとき…』ガサゴソ


「お、一回出来るよ!回してって!」


シュー「 忍路殿 頑張って下さいッッ!」


『ええ…と、じゃあいきます!!』ガラガラ


勢い良く福引きを回すと
色が付いた玉が踊り出た


「おー!!お姉ちゃん達にピッタリのが当たったよぉぉぉ!!やったねぇ!」


シュー「凄いじゃないですか! 忍路殿! 」


『わぁ、何だろう?』


「ほい、有名ブランドのペアのペンダント!!」


シュー「ペア…」


『ペンダント!?』


「あいよー、まいどー!仲良くなー」


━━━


『どどどどどどうしましょう…こんな…あのオジサン、すっかり私達を…』


シュー「カップル扱いでしたねぇ……貰ったの、見せて下さい」


『す、凄いですね…有名ブランドですって…』


シュー「…… 忍路殿 じっとして…」


『え?』


キレイなパッケージをスルスルほどいて、私の首に そのペンダントを着けてしまった


シュー「…お似合いです……」


『えええっ、ちょ、コレ 開封しちゃったら 売る時に値段が下がっちゃいますよ?』


シュー「売っちゃうんですか?」


『だって 私には文不相応な…』


シュー「お似合いですってば」


『で、でも…』


シュー「せっかく当たったのに?」


『………じゃ、じゃあ シューさんも…着けて下さい……』


シュー「え… 忍路殿が 貰った物でしょうに…?」


『[ペア]…だから、男の人が着けても良いでしょ…それに、シューさんが着けてくんないなら、私………別に、こんなの……いらない…』


シュー「………良いんですか?私と…ペア…なんて」


『良く…無いんですか?私とペアなんて…?』


シュー「…いえ…喜んで…じゃあ、 忍路殿 私の首にも、着けて下さい」


『え?は、はい…』


少し屈んでくれたその首に、戸惑いながらも
チェーンを巻く…


シュー「どう…でしょう?」


その問いかけに 胸はドキドキ、頬は燃える、頭はパニック

何故って、お揃いのアクセサリーを身に付けてしまった…っていう特別感

有名ブランドなんかじゃなくても、シューさんとお揃いっていうだけでもう…
なんかスゴく嬉しい

おまけに その笑顔…

少し照れた様にはにかんで、けど いつもと違う 何かを企んだみたいな含み笑いも潜んでる 睫毛の奥


『カッコいい…です…お似合い…です…』


絞り出すように やっと言えた


シュー「私の首に 付けてくれる時は積極的に見えたんですけど…もしかして 照れてます?」


『ええっ!?べ、べつにそんな…!!』


シュー「はははは、すみません、冗談ですよ」


『も、もう!』


シュー「………ずっと 大切にします……」


『え?何か言いました?』


シュー「んー………薔薇色の鎖、ゲット…みたいな」


『ひえっ!?な、何ですかその恥ずかしいワード!』


シュー「そうですか?何かイケてません?」


『や、止めて下さいよう…』


シュー「HEY YO 君の愛のチェーン!彩られたレーン!甘く進む薔薇色のシーン!」


『は、恥ずかしいぃぃぃ!!』ばたばたばた


シュー「あ、ちょ、 忍路殿!待って下さいよー! 」どたどたどた


茶化しながらも、この予定外の神様からの贈り物に胸のドキドキは鳴り止まない…


end

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あきゅろす。
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