☆クラシカ口イドの小説(長編)
青い青い水族館(彼目線)
『もしも此所で、シューさんのムジークである[ます]が、発動したなら…私達、捕まっちゃって、水槽の中に閉じ込められちゃいますね』
そう呟いた彼女の目はライトの反射をクルクルと受けて 青く輝いていた
美しいと 思った
シュー「閉じ込められたら…どうします?」
熱帯魚を追う瞳の動き
少し髪が揺れる
『…楽しいでしょうか?』
シュー「魚になっても 忍路殿と 同じ水槽の中なら…楽しいでしょうね」
『ホントですかァ?私は、鱒に変身するかわからないのに?』
くすくす、太陽の様に眩しく 笑った
なので 思わず その手を握り、真顔になり 熱の籠った眼差しを向けてしまったのだ
シュー「ホントです…」
『…そ…』
何かを
言いかけて やはり口をつぐんだ
言いたい事は何となく解っている
[そこにベトさんが居なくても?]
先輩が居ようが居まいが 貴女に対する気持ちは変わらないのに
どうして…通じないのか
先輩は敬愛する偉大な方
私の中で 居なくてはならない存在
しかし 貴女もまた 私に必要な存在なのだ
父親が居れば 母親が要るように
偉大な祖父が居れば 分かち合える兄妹が居て欲しいように
貴女を知らなかった頃に 戻れなくなっているというのに
『シューさんも…そんなお顔をして、お辛いんですか…?なら、私も遠慮せずに…思いの丈を言葉にしますね』
シュー「………はい!…隠さずに、教えて下さい!」
『あの、お腹空きませんか?』
シュー「……………は?」
『そうめん…みたいな、あっさりしたものが食べたいなぁって……えへへ』
シュー「……………」
先程 言いかけた[そ]から始まる つぐんだ言葉
この様子から察するに、嘘でも誤魔化しでも無いだろう
深い溜息が無意識に 肩の力を抜く
シュー「では、この水族館とやらを出て、食事をしましょう」
━━━
今日は 忍路殿が 何処かへ行こうと誘ってくれた。
あの館を出て こうして彼女に付き合うのは新鮮だ
このような施設も興味深いものだし
何よりあのモーツァルトの喧しい声を聞かずに居られるのは素晴らしい事。
忍路殿と神に感謝しよう
『シューさん…深読みし過ぎて、苦しくはないですか?』
シュー「え?」
『私の顔色ばかり伺ってます』
シュー「そ、そんな事は」
『そうですか?ならいいんですけど…』
藪から棒に
どうしたというのだろう
彼女の表情を確かめようとするが こちらからは見えない
だが しなやかな柔らかい手が私の手に絡み、繋がる
『私、シューさんが大好きなんですよ』
シュー「…!」
『ラッパーのシューさんも、ムジーク衣装のシューさんも、洗い事してるシューさんも、畑仕事してるシューさんも…』
シュー「 忍路殿…」
『ベトさんの事、大好きなシューさんもですよ』
シュー「…!!」
『だから、ね、私と一緒に過ごす時間を 怖がらないで下さい…』
シュー「こ、怖がってなど…」
『ごめんなさい、私が戸惑わせちゃったんですね』
シュー「…」
『シューさんがお付き合いして欲しいと言ってくれて、とても嬉しかったんです…だけど、その時は勘違いしていて…』
シュー「勘違い…何をです?」
『シューさんが抱く、ベトさんへの想いについてです』
シュー「先輩への想い?」
『シューさんが同性愛主義者なのかな、と思っていました』
シュー「…………は?」
『ゲイなのかも……と思っていました。むしろ、男性も女性もイケる、その…バイセクシャルという……』
シュー「ぐおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ」
『それは、誤解だと ベトさんが教えてくれたのです』
シュー「せ、先輩が?」
『ええ、否定してくれました』
シュー「ウッ、ベートーベン先輩ぃぃぃぃ」
[*前へ][次へ#]
[戻る]
無料HPエムペ!