[携帯モード] [URL送信]

☆クラシカ口イドの小説(長編)
星空とシルエット
たまには 夜の散歩も良いだろう
そんな気分で 夕食を終えた後にぶらぶらと街明かりに誘われる


疎らに行き交う人々の群れを構成しているのは、
窶れた男
足早に去っていく女
手を繋ぎ歩いていく恋人たち


雑踏はシンフォニーの様に渦巻く


自動販売機の光、クラクション、ビルの間の闇ですら 眠りを忘れたかのように忙しく留まる事を知らない世界だ


足元は外灯に照らされて 目映さで 星も見えない

僅少の寂しさと共に 視線を落とした時に 俺の目は見慣れたシルエットを捉えた


ベト「歌う小娘」


『あ ベトさん』


ベト「こんな時間に何をしている?珍しいな」


『そこのお店に調味料を買い足しに来たんですよ。ベトさんこそ どうしたんですか?』


ベト「散歩だ」


『良いですね。お散歩』


ベト「もう帰るのだろう?俺も行こう」


『…もしかして 気を遣ってます?いいんですよ、まだお散歩の途中だったんじゃ?』


ベト「お前は警戒心が無さ過ぎる」


『え?』


ベト「女性の一人歩きは感心せんぞ」


『ああ、そーゆー事ですか。ありがとうございます』


ベト「全く…ほら 往くぞ」


『はーい…ふふふ』


ベト「何が可笑しい?」


『たまにベトさんて、シューさんみたいな事も言うんですね』


ベト「…この国は治安は良い方だとは思うが、夜に一人で出歩くな…誰でも良いから、声を掛けろ。付いて来させろ」


『はーい』


ベト「全く!お前といい小娘といい、危機感が無い…」ぶつぶつ


『だってー…ベトさんに声を掛けようと思ったら、居ないんですもん』


ベト「はぁ…??俺!?お、俺以外にも居るだろう…お、お前に付いてくる奴なら」


『んー 着いて来てもらうなら、ベトさんが良かったからー……』


ベト「はぁッッ!?」


『なんちゃって!!冗談ですよ?笑って笑って』


ベト「わ、笑える要素が何処にあるんだ!」


『へへへー、あっ 公園!!寄ってって良いですか?』


ベト「人の話を…」


俺の言葉を聞いてか聞かずかの内に 彼女は公園に入って行った

全く…ワガママ気儘な迷い猫を拾った気分だ


眉間に皺が寄る感覚を強く感じながら後を追ってしまうのは、それでも俺が守ってやらねば…と どこか危なげな印象がそうさせる様だ

既に 明かりが主張し過ぎていないベンチに腰をかけて 忍路は空を見上げていた


『ねぇ、星が見えますよ!』


同じように視線を上にやると 確かに 星が輝いていた


ベト「街明かりが邪魔をしないと 見えるものだな」


『ね!!キレイ!!』


こちらを一瞥し 綻ぶ様に笑い、また星空に目を向けて…
そんなコロコロと変わる表情に 俺の頬も不意に弛む

また、忍路の目に映り込む 沢山の光りに魅せられて つい 見惚れてしまった


まるで 世界中に在る 数多の夢を灯火にして 彼女の瞳中に吸い込ませ、散りばめた様に…
美しい……

彼女は 俺の預り知らぬ星から来たのではないか、
そんな馬鹿げた空想が過り、かぶりを振る


其れほど 輝いて見えたのだ

淡い光を浴びた彼女の横顔が……


『ベトさん、はい どうぞ』


ベト「ん?」



[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!