☆クラシカ口イドの小説(長編)
珈琲と午後
ベト「………それで、何故こいつが此所に居る?」
白髪の彼が これまた白髪の彼を睨みつけて言うのだ
『まぁまぁ、ベトさん。バッハさんは美味しいコーヒーを持って来て下さったんですよー?』
歌苗「そうよー。中々お目にかかれない、お高いヤツを買ってきて下さって…えーっと、ドリップして下さったのよ」
ベト「至高のコーヒーならば俺が…」
歌苗「良いじゃない。バッハさんが淹れてくれたんだからー。」
『素敵ですよ、パナマのエスメラルダ農園のゲイシャっていう…』
ベト「あああああぁぁぁぁぁ煩い煩い煩い!銘柄などどうでも良い!金にモノを言わせよって!!味と値段は比例するとは限らんだろう!!」
歌苗「良いじゃないの!美味しいんだから!ほら、お茶菓子まで持って来て下さったのよ!!」
リスト「なかなか愛に溢れてるわよ」モシャモシャ
ショパン「むしゃむしゃ。美味しい。」
モツ「このクッキーすごーい!!おっぱいみたいー」
シュー「コラ、下品だぞ モーツァルト」
モツ「ルー君も食べたら良いのにー。ほらほら」
ベト「フンッ!!これで勝ったと思うなよ、バッハ…大体貴様は…」
モツ「ほい」ポイッ
ベト「むぐ」パクッ
『はい、コーヒーです』
ベト「ゴク…」
ベト「!!」ぺかー
モツ「ほーら、良い顔になったぁ」
シュー「美味しいモノは人を笑顔にしますねぇ」
リスト「愛ね」
ベト「くそぉぉぉぉぉ!!これで勝ったと思うなよぉぉぉぉぉ」じたばた
『バッハさんも、こっちへいらして下さい。折角なんですから一緒にお菓子を楽しみましょう』
バッハ「…ああ」
━━━
バッハさんがこうして 音羽館にたまに顔を出してくれるようになって何度目か
皆さんは歓迎ムードだ
ベトさんだけちょっと声が大きいけど…もしかして 照れてるのかな?
私もコーヒーは大好きだから毎回 楽しみにしている
このバッハブレンドと とても良く合うクッキーやケーキ…幸せ過ぎる…
何より嬉しいのは 他愛無い話をバッハさんと出来る時間が増えた事
アルケー社に居るときは私もバッハさんも仕事モードありきだし…
『バッハさんはどんなお菓子が好き?』
バッハ「…なんでも食べる」
『好き嫌いしないのは偉いですね』
こんな会話ができる事、とても嬉しく感じる
━━━
歌苗「なんか、あの二人 良いカンジかも」ヒソッ
リスト「うーん ちょっと意外ね」
ショパン「うん…彼はもっと…ねぇ?」
リスト「そうねぇ、大人の女性というか…日芽ちゃんみたいな?」
ショパン「うん。そーゆー人が似合うかなーとか…思ってた」
歌苗「ええ…私のお母さん、引き合いに出されてもなぁ…」
モツ「まぁまぁ♪美味しいお菓子も食べられるんだし♪」
シュー「平和が一番ですよ、ね?先輩」
ベト「…まぁな」むしゃむしゃ
━━━
━━
━
━━━
彼目線
━━━
この館に赴くのは 苦手だという訳ではない
響吾の暮らした場所、兄弟達が暮らしている場所だから たまには立ち寄ろうかとも心が向く時はある
ただ 共に過ごす時の短さや これまでのやりとりの関係性もあり、時折 どうでも良い疎外感や羨望による 機微は少なからずあった
一定の距離がある以上 当然の事なのだ
しかし 君が居るだけで
そんなちっぽけな 胸の痞(つかえ)は消えるから
この穏やかな時間を楽しむことができる
だが 時間の流れは早過ぎたりと 時に無情だ
バッハ「…そろそろ、時間のようだ」
リスト「あら、行くの?」
ショパン「ご馳走さまでした」
モツ「今度は僕、ゼリーが良いなぁー」
シュー「こら!モーツァルト!…ご馳走になりました、バッハ殿」
ベト「次は事前に来る時間を申告しろ…俺のギョーザーを振舞ってやる」
歌苗「あの、どうもありがとうございました!…お見送りに…」
リスト「子猫ちゃん、後片付け。一緒に手伝うわ」
歌苗「え?でも お見送り…」
リスト「野暮よ…♪」ヒソッ
歌苗「え?あ…ああ!了解です リストさん!!では忍路さん!!バッハさんをお送りして下さいね!!」
『へ?あ、はい』
━━━
[*前へ][次へ#]
[戻る]
無料HPエムペ!