[携帯モード] [URL送信]

☆クラシカ口イドの小説(長編)
Surprise Heart
テレビから 見慣れた顔と、聞き慣れた声が歌う、聞き慣れない歌

比較的直ぐに気付いたのは、見慣れた顔の女の子二人の中に 彼が加わって歌っていたことが意外だったから

プロデューサーのバッハさんに聞いてみるも 今回のコラボレーションの成功について熱く語り出すだけで 質問の核心にはたどり着けないまま


━━『どうしてシューさんがクラクラとコラボしてるんですか?』━━


三弦さんに質問して、やっと謎が解けた


三弦「あの館の家賃を払いたいとかで、バッハ様に掛け合ったみたいッスよ」


まあ、想像通りの理由といえばそうなんだけど…


━━━


モツ「へぇー シュー君凄いノリノリじゃん」


リスト「タコラッパーが衣装のバージョン代えして…良いカンジじゃないの?」


ショパン「[クラクラと謎のラッパーがコラボ、プロデューサーJSBによる待望のミュージックマジック]…評判は良いみたい」


奏助「ちょっっ!!シューさんだけズリぃ〜!!くぅ!クラクラとステージに立てるなんて羨まし過ぎるぅ!!」


歌苗「お家賃、ちゃんと入れてくれるのかしら…」


ベト「…ふむ」


液晶の向こうでチャイコちゃんやバダちゃんの曲の合間、ラップや合いの手を入れて踊るシューさんを見て 皆の評価も肯定的だった

勿論 私も。

けど 胸にぽかりと開いた、少し寂しい気持ちが作る空間
一人きりじゃないはずなのに、独りきりみたいな…


もう6日、シューさんには会ってない


━━━


遠い、遠い明日だなぁ…なんて日々を繰り返しながら モヤモヤしながら、また 数週間が過ぎて。


そんなある日の夜明け前に
バッハさんに会いにアルケー社に行けば、シューさんにも会えるかな…
そう思いついた


結局 2回足を運んだけど、会えなかったんだよね

けど 話は聞くことができた



バッハ「クラクラと謎のラッパーコラボ…このユニットは知っているね?彼らの楽曲を増やそうと思う。歌詞を書いて貰いたい」


『歌詞はシューさんが担当したんじゃないんですか?』


バッハ「前作は彼の色を出したくて、ファンキーな仕上がりになったが、今回は君の感性でお願いしたい」


シューさんの近況とゆーよりお仕事のお話だった

さて こんなリクエストを受けて クラクラとシューさんのプロモを眺める事一時間


歌詞のコンセプト等は私に委ねられるが どんなワードを入れたら良いのか いつになく文章は迷子だ


チャイコちゃんやバダちゃんとの絡みもある…シューさんを見ていたら どうしてかな
寂しい、切ないワードばかり浮かんでしまう…

貸し切りの会議室に私の唸りが響く


━━━
後日
━━━
━━



バッハ「今回は恋歌の歌詞か…」


『あ、いや…えっと、書いてたらこうなっちゃったってゆーか、出来上がりがこうなったとゆーか…………ハイ。』


バッハ「ふむ…バラードにも使えそうだが…面白い」


『つ、使えそうですか?良かった』


バッハ「ふふふ、君の発想力は 私を楽しませてくれるな…勿論さ」


ほんとに良かった…
期日迄に間に合う余裕も無いし、ダメ出しされたりするかもって思ったから胸を撫で下ろす


バッハ「今、リハの最中ではないかな。会って行くかね」


『え、あ、は、はい』


━━━
━━



バッハさんに案内してもらい、スタジオに入ると、チャイコちゃんとバダちゃん、そしてシューさんが居た

丁度 歌が終わる所で、挨拶が出来そうだ
私は三人に駆け寄る


『こんにちは』


バダ「忍路!!」


シュー「忍路殿!!」


チャイコ「久しぶりだなぁ、なしておめぇが」


私の後ろに立つバッハさんを見てチャイコちゃんがハッとした顔で眉間を歪める


チャイコ「おめぇ、バッハ様ん所行ってたのかぁぁ」


『え?う、うんまぁ』


チャイコ「………おっ!そっかぁ!シューベルトに会いに来たんだなぁ??そうだべそうだべ!!いやぁおめーら、隅に置けねぇなー」


バダ「チャイコちゃん 必死だし わざとらしい…」


『ええええわ、私、シューさんに会いに来たとゆーか、タイミングが丁度良くですねぇ』あたふた


シュー「そ、そうなのですか 忍路殿…はははは、わざわざありがとうございます」


少し照れた様に笑うラッパーシューさんは 目を細めてくれる

わぁ…久しぶりのシューさんだ
プロモの衣装着てるけど、いつもの笑顔…


胸がいっぱいになってしまった私は言葉に詰まり ぎこちなく微笑みを作ることしか出来ない


チャイコ「うんうん、おめぇらお似合いだ。シューベルト、女の方から迎えに来てくれてんだから一旦帰ぇんねぇのか?」


シュー「…」


『えっと…』


シュー「お気持ちはありがたいのですが、あの館の方々は私の存在には然程 感じる所も無い様なので…」


『そ、そんな シューさんの事を心配してる人も居ますよ』


シュー「…そう言って下さるのは貴方だけですよ、忍路殿。ありがとうございます」


『シューさん…』


シュー「私はまだ帰れません。ポスターの撮影とCDジャケットの撮影も残っています」


━━━


まぁ…そうなるよね

シューさんが留守にしてること、心配そうに気に掛けてるのは歌苗さんくらいだもん

それはそれで、皆は信頼してるからこそだとは思うんだけど…

バッハさんの所に居たら 遣り甲斐のある仕事もあって、気分的にも違うんだろうな


シューさんの立場でも、歌苗さんの立場で考えてみても 答えは無いし 複雑…

ぶつかり切れない物事への壁を崩せないまま
斜に構えた気持ちを転がして、私は帰路を辿る



[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!