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☆銀魂の小説(真選組/長編)
7―おにぎりの香り(完)
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―――屯所―――


私は どうやら本当にテロの時間稼ぎに 人質として拐われただけらしい


嗚呼
また怒られるんだろうな…『自覚が足りない』とか『気を引き締めろ』とか……

私はしゅんと肩を竦めて副長と向き合った


『どうもすみませんでした…』


土方「…まぁ ある程度はしゃーねーだろ……」


鬼の副長にそう言わせた自分が情けなかった


『私 此の処ドジばっかで…本当に申し訳ありません』


土方「…俺はおまえらの尻拭いなんざ馴れてる、それより…近藤さんが心配してたぞ、ったく あの人もあの人だ…」


『ですね…まさか…局長自ら助けに来ちゃうなんて思わなかったです』


『優し過ぎます…』


土方「……」


『私…近藤さんの心に入り込んで、お妙さんとの間を邪魔しちゃったと思ってて…
愛染香を使う迄の本当の近藤さんは、私に見向きもしませんでしたから』


ジワリと 今まで溜め込んでいた熱いもので視界が潤む


土方「(見向きもしなかった訳じゃねぇが どうせこいつは気付いてねぇし…ったく面倒臭ぇ)」


副長は溜息を小さく吐き出した


土方「真の近藤さんがどうの言うが結局自分が傷付きたくなかっただけじゃねーか?

おためごかしで くるんで 胸の奥に仕舞って…
テメェの想いってのはそんなモンだったのか?


香の効力が消えたっていいじゃねぇか
「私はあなたを愛してます」ってすがり付きゃよ


数日前迄は 近藤さんに必要なのはあのメガネの姉御じゃなく、確かにおまえだったんだ

入り込みゃいいじゃねぇか
居座りゃいいじゃねぇか

大体お前、自分の気持ちをちゃんと伝えたのかよ?」


『…ジミーにも 同じ事よーな事 言われました
私…大事な事、まだしてません…』


『近藤さんはいつも裸でぶつかって来てくれてるのにね…精神的にも物理的にも』


土方「……」


『土方さん パンケーキもアドバイスもありがとうございました…ちょっと行ってきますね』


土方「近藤さんなら今 事務室に居…「なぁトシぃ…」ガラッ


近藤「あー! 仁和 !もう大丈夫なの?」


『ひわぁぁぁぁだだだだ大丈夫です!』


土方「…」(こっちのタイミングつーか段取り フルシカトかよ)


近藤「1日 2日くらい休んでも良いんだぞ?大丈夫か?熱もあるんじゃないか?顔が赤…」


『いえ!おかげさまで元気100倍です!あと…局長自ら 救出して頂いて…あのその』


近藤「ん?ああ…」


土方「ゴホン!あー 俺はちょっと一服してくるからな」(良い雰囲気…頑張れよ…)


沖田「いやぁしかし 仁和が誘拐されたって知った時の近藤さん止めんのには苦労しやしたぜィ」ヒョッコリ



土方「俺が苦労したわ……って何音も無く 出て来てんだ総悟ぉぉぉぉぉ!」


沖田「いやいやぁ、ホントに回りのこと見えなくなって走って行っちまうから大変でしたよ」


土方「いや、俺が大変だったんだってば」


近藤「ははは、すまんすまん…だって仁和 が触られたって聞いて、居ても立ってもいられなくなってさぁ」


土方「いや 仁和が、拐われた、の間違いだろ
触られ…ってなんかいやらしいぞ」


近藤「仁和…俺、おまえに謝らなきゃいけない…」


『へ?』


近藤「俺、変でさ
お前のシャツ握り締めたまま お前の部屋で勝手に眠りこけてりするんだ…俺、夢遊病とかかも!!」


土方(ああもう!ちゃんと弁明しろよ 仁和!!)


沖田「夢遊病…道理でここんとこの近藤さんはおかしかった訳ですねィ」


近藤「えっ 何かやってた?俺、他にも何かやってた?」


沖田「姐さんのストーカーをぱったり辞めちまったり、 仁和にまとわりついたり、 仁和にGPS付けたり、仁和の制服の匂い嗅いでるの見ました」


近藤「きゃー!総悟ぉぉぉぉ止めて止めてぇぇぇ 違うんだ仁和!
それは決して疚しい気持ちでやってる訳ではなくて!」


土方「疚しさしかねぇだろ…ったく」


『こっ近藤さっ…制服のに、に、匂いって…まさか 洗濯前ですか?せめて洗濯後ですよね…』ぷるぷる


沖田「野暮な事聞くなィ、洗濯前に決まってんじゃねーかィ」


近藤「そそそんな訳ないだろ!俺は知らん! 仁和の汗は甘酸っぱくてほんのり香水の匂いが残ってたりなんて知らんぞ!」


『ぎゃー!変態変態ィィィ!うぇぇぇぇん』ぽかぽか


近藤「ぐえっ」


土方「うぉ てめ仁和、隠し持った凶器でカワイイ擬音出して 近藤さんを攻撃してくんなよ」


近藤「ごめんなさいごめんなさい!俺、変でしょ!お前の部屋で眠りこけてた日 夢を見たんだ」


近藤「世にも美しい…女の夢だったと思う」


『へ…』


近藤「あの日、その夢の女と唇を重ねた時の香り、お前の隊服と同じ香りだったんだよ」


『!』


沖田「へー…近藤さんとキスを…むぐっ」


土方「テメェはもう黙ってろ 茶々入れてんじゃねー!良い雰囲気なんだから気配を消せ!」(小声)


『何で…覚えてるの…?』


近藤「部屋にコレが落ちてたんだ」


沖田「飴玉?」


『ああああぁぁぁぁ!』


近藤「解析したら、この飴玉は記憶操作の薬だったらしい。
愛断香と睡眠薬、3つ合わせて使ってのみ 効果が発揮されるようだ」


土方「その反応は…使うの 忘れたんだろ、仁和」


『……は…ぃ』


近藤「中途半端な施術だったんだろうから俺は中途半端に記憶喪失みたいでな」


土方「その様子だと けっこう重要なイベントは覚えてそうだな」


近藤「そうでも…ウフフ…無いよ…ウフフ
ボヤける頭で苦労したよ…ウフフ」ニコッ


沖田「鼻血拭いて下せェ」


『ぁぅ…ぁぅ…あんなにカッコつけたのに』カァァァァ


土方「(もう仁和を見てられない)」


沖田「赤くなったり青くなったり白くなったり、どっかの国旗みたいですねィ」


近藤「なぁ仁和、俺を見て」


『………(恥ずかしくて目なんて見らんない…)』


近藤「プロポーズの返事…聞かせて?」


土方「ぶふぉ」


沖田「へー 近藤さんがプロポーズを、こいつぁー隅に置けねぇや」


土方「そんな事してたのかよ 高速スピード婚じゃねぇか」


近藤「俺を待たせないって お前は言ったけど…ちょっと我慢できないよ…仁和の気持ちが知りたい」


『…さい…』


土方&沖田「ドキドキ」


近藤「え?」


『ごめんなさい!』ペッコー


近藤「ガーン」


沖田「あーあ 真っ白になっちめーやがった」


土方「なんでだー!仁和!!??ザキと俺にお膳立てロマンスさせねぇつもりかー!」


『違う…』


真っ白になって固まった近藤さんの手を引っぱる


近藤「え?」


近藤「ちょ、わ、どこ行くの仁和!」


キョトンとしてる土方さんと沖田さんは放っておいて
近藤さんと二人でこの部屋から走って逃げ出しちゃおう


『近藤さん、私、結婚前に 恋人期間も大事にしたいの』


近藤「えええ」


『恋人から よろしくお願いしまーす!』(叫)


近藤「えええや、やったぁー」


『副長ー、急用が出来たんで休みまーす!』(叫)


近藤「トシー!悪ぃ!俺も俺もー!」(叫)


沖田「後はよろしくなァー 土方ァー」(叫)


土方「総悟ぉぉぉぉオメーは違うだろゴルァ!」(追)


後の事は後で考えよう

ごめんね、土方さん

迷惑ついでにもう少しワガママさせて下さい


end



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あきゅろす。
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